第4回「縦割り」中国、台湾統一工作に矛盾 東大教授が語る日本の役割とは
中国の習近平(シーチンピン)政権が今月、台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統の訪米に反発し、台湾周辺で軍事演習を行いました。習政権は3月の全国人民代表大会(全人代)で、台湾の「平和的統一」をめざすと唱えたばかりです。中国の本意はどこにあり、今後、どんな動きが想定されるのでしょうか。中国の対台湾政策に詳しい東京大学の松田康博教授に聞きました。
【連載】台湾「強制的平和統一」への布石 依存させる巨大市場
台湾の「平和的統一」を掲げる中国の習近平政権は、巨大市場を武器とした幾層もの働きかけを続けています。台湾側が「戦わずに台湾を奪う」ねらいだと警戒するその工作とは。台湾の現場から報告する連載の最終回です。
――中国の軍事力増強が進み、世界的に台湾有事への関心が高まっています。「有事」はあり得ますか。
台湾統一を目的とする中国の武力行使には、非常に大きなコストが伴います。米国の介入を招いて失敗するリスクがあるほか、低成長期に入った中国経済も甚大な打撃を受けます。中国軍の能力は飛躍的に向上しているものの、まだ台湾への上陸作戦を成功させられるレベルには達していません。私は、短期的には中国が台湾に進攻する蓋然(がいぜん)性は極めて低いと考えています。
――台湾本島ではなく、台湾が管轄する中国沿岸の金門島や馬祖列島など、離島への進攻の可能性はどうでしょう。
限定的な武力行使でも、損得勘定が合いません。台湾統一を掲げる中国は、離島のみを攻撃しても、「本島は狙わない。これは限定的な攻撃だ」とは表明できません。また、台湾が管轄する南シナ海の東沙島や太平島を含め、離島には人が住んでいます。人的被害が出て、ボーダーラインが変更されれば、国際社会の警戒が高まり、台湾防衛準備がさらに進み、その結果、中国はかえって台湾を取りにくくなります。
交流と圧力、同時に進めても…
――では、今回を含め、台湾周辺での軍事演習の狙いをどう理解すればいいのでしょうか。
中国の軍事演習には軍事パレ…
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