生活保護の減額決定、取り消し認めず 受給者ら逆転敗訴 大阪高裁

森下裕介
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 国が生活保護基準額を2013~15年に大幅に引き下げた改定は、生存権を保障した憲法25条などに違反するとして、大阪府内の生活保護受給者らが、保護費を減額した自治体の決定の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決が14日、大阪高裁であった。山田明裁判長は、減額を違法とした一審・大阪地裁判決を取り消し、原告側の請求を退ける逆転判断を示した。

 原告側弁護団によると、全国29地裁で起こされた同種訴訟で、高裁判決が出るのは初めて。13日までに出た地裁判決19件のうち、9件は減額決定を取り消し、10件は請求を棄却しており、判断が分かれている。

 一連の訴訟では、国が「08~11年の物価下落率を反映する」などとして食費や光熱費といった日常の生活費にあたる生活扶助の基準額を最大10%引き下げたことが厚生労働相の裁量権の範囲かが主に争われた。

 21年2月の一審・大阪地裁判決は、原油価格が高騰した08年を物価下落率の起点としており、「合理性や専門的知見との整合性を欠く」と指摘。生活保護世帯があまり支出しないテレビやパソコンなどの物価変動を大きく反映した点も「判断過程や手続きに過誤・欠落がある」として裁量権の逸脱にあたると認め、減額決定を取り消した。

 一方、原告らが国に1人あたり1万円の支払いを求めた慰謝料については、減額決定を取り消すことで損害は回復されるなどと判断し、請求を棄却。自治体側と原告側がそれぞれ控訴していた。(森下裕介)

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