元国交次官「副社長支えるためOB送った」 名前挙がった役員は辞任
国土交通省の元事務次官で東京地下鉄(東京メトロ)の会長、本田勝氏(69)が、東証プライム上場の「空港施設」(東京都)に対し、国交省OBの副社長を社長にするよう求めていた問題で、本田氏が、この副社長を支えるため、別の国交省OBの同社役員2人を「(同社に)送ってある」などと発言していたことがわかった。元次官が、同社に天下った役員2人の実名を挙げることで影響力を示し、要求を実現しようとした可能性がある。
同社は10日、この役員2人のうち、元観光庁長官の同社監査役(69)が「一身上の都合」で辞任したと発表した。同社によると、一連の問題を受け「自分は(幹部人事案を評価する)指名委員会の委員でもあり、会社に迷惑をかけたくない」と話しているという。2022年6月から務めていた。自身の監査役就任と本田氏とは「関係ない」と話しているという。
複数の関係者によると、本田氏は22年12月13日に同社を訪れ、首脳に「国交省の出身者を社長にさせていただきたい」「国交省としてあらゆる形でサポートする」と伝え、元国交省東京航空局長で当時副社長の山口勝弘氏(63)=4月3日付で辞任=を、来期の人事で社長にするよう求めた。この際、山口氏を「補佐する」人物として、気象庁次長を務めた国交省OBの同社取締役常務執行役員の名を挙げ、「(同社に)送ってある」と発言。さらに監査役の名も挙げて「口説いてなっていただいた」と語っていた。2人に「しっかりやれと指示している」とも話していたという。
本田氏は、取材に「(山口氏の)先輩やよく知る人が周りにいるので、注意したり相談に乗ったりできます、という意味」「副社長をしっかりサポートしてくれよと言った」と説明。一方で、この2人の役員就任には「一切関与していない」と述べた。
朝日新聞は7日、空港施設社を通じて、常務と監査役に就任の経緯や本田氏の発言についてたずねていた。同社は7日、「幹部人事選定や就任の過程について、個別取材への回答は差し控えるべきと考えている」と回答していた。
本田氏は昨年12月の要求の際、自身の立場を「有力なOBの名代」と語っていた。その後の国交省の聞き取りに「有力なOB」はいずれも元国交事務次官の小幡政人氏(78)と安富正文氏(75)と説明している。