福島第一原発事故の「三つの検証」結果出そろう、総括委の開催焦点に

長橋亮文
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 2011年の東京電力福島第一原発事故を受け新潟県が独自に進めている「三つの検証」の結果が24日、出そろった。検証結果は柏崎刈羽原発の再稼働の是非を判断するにあたり花角英世知事が考慮するとしているが、結果を取りまとめる検証総括委員会は池内了委員長と県側の対立から2年以上開かれておらず、今月末で任期を迎える池内委員長の去就が焦点になる。

 この日、健康分科会(座長=鈴木宏・新潟大名誉教授)が花角知事に報告書を提出した。疫学・公衆衛生学や放射線衛生学などの専門家が17年から、福島県による県民健康調査や放射線被曝(ひばく)の論文などを参照しながら、福島事故で放射性物質の拡散と避難が住民に及ぼした健康被害を検証してきた。

 報告書の提出のため県庁に花角知事を訪ねた鈴木座長は、放射線量の測定が十分でなく、被曝と健康影響の検証が困難だったことを強調。「安全神話があり、事故の初期活動が遅れてしまったのが最大の問題だ」と述べた。花角知事は「県の事故対応の体制づくりをしっかりと考えていく」と応じた。

 報告書では、福島県の調査で見つかった子どもたちの甲状腺がんについて、国連科学委員会が被曝の影響ではなく「過剰診断の可能性」があるとした点に言及。「放射線による可能性を否定する証拠は存在しない」とし、過剰診断の割合の「定量的な検証」の必要性を指摘した。

 放射線から身を守るには適切な避難が重要だとした。避難生活が長期にわたることで、子どもの肥満や避難先での自殺、母親のうつの増加がみられたとも分析した。

 そのうえで、放射線の測定にドローンを活用することや、個人の被曝線量を測定したり避難行動を把握したりできる体制を構築することなどを提言した。

 三つの検証は、技術、避難、健康・生活の各委員会に分かれて進められ、健康・生活委の健康分科会を残すだけとなっていた。鈴木座長はこの日、避難委と共通する内容もあるとして、検証総括委を開いて「融合しながらやるのが鉄則」と語った。(長橋亮文)

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