伊方原発3号機の運転差し止め、認めない決定 広島高裁

大野晴香 福冨旅史
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 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)は地震に対する安全性が不十分だとして、広島県や愛媛県の住民7人が運転差し止めを求めた仮処分申し立ての即時抗告審で、広島高裁は24日、申し立てを却下した広島地裁決定を支持し、住民側の即時抗告を棄却した。脇由紀裁判長は「住民らの生命や身体に具体的な危険があると立証されたとは認められない」と判断した。

 決定は、四電が3号機を運転できるようになったのは、新規制基準に基づき、地震に対する安全性を含めて原子力規制委員会で審査され、許可されたからだと指摘。住民側が運転の差し止めを求める場合、運転による具体的な危険性があるかどうかを立証する責任は四電側ではなく、住民側が負うのが原則だとした。

 その上で、最大の地震の揺れを示し、原発の耐震設計のもとになる「基準地震動」を650ガルと算定している3号機の耐震性を検討。住民側は、1千ガルを超す地震動が国内で観測されており、それらの地震と比べて「低水準だ」と主張したが、決定は「地盤などの地域特性を考慮せず、数値のみの比較で低水準とはいえない」として退けた。

 住民側は今後、特別抗告について検討するという。弁護団は「学者でも証明できないようなことを住民側に立証しろと言っている。とても不公平な決定だ」と強調。申立人の90代女性=広島市=は「『原発回帰』の司法判断だ。想定外のことが起きないことを祈るばかりです」と嘆いた。

 四電の担当者は取材に対して「裁判所の理解を得られ、妥当な決定を頂けた」と話した。

 3号機を巡っては、広島高裁が2017年と20年、運転差し止めを認める仮処分決定を出したが、いずれも四電側が異議を申し立て、取り消されている。(大野晴香、福冨旅史)

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〈四国電力伊方原発〉四国唯一の原発で、瀬戸内海側に1~3号機がある。2011年の東日本大震災後に定期検査のため運転を停止し、1、2号機は廃炉が決まった。3号機(出力89万キロワット)は新規制基準への適合が認められて16年8月に再稼働し、現在は定期検査のため、運転を停止している。

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