災害時支援は「オスソワケ」で 銚子の大学生ら発案 じわり広がる

大久保泰
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 日頃から支援のための寄付を募り、災害時に被災地に物資を送る――。千葉科学大学千葉県銚子市)の学生らとまちづくり団体が、「OSUSOWAKE(オスソワケ)」という支援の仕組みを考案し、この2年普及に取り組んできた。伝統的なおすそわけの慣習を持続的な仕組みにしようという狙いで、寄付する人にも日頃から防災の大切さを考えてほしいとの思いもある。(大久保泰)

 2021年に支援の運用を始めてから、学生らは市内の商業施設やロータリークラブなどをまわり、理解を求めてきた。今年2月には、県議会議員の勉強会にも呼ばれ、4年生の平野束真(つかさ)さん(22)が支援の仕組みの理念をこう説明した。

 「これは日本人なら誰もが知っている『おすそわけ』という言葉を、令和の時代に再度、意味づけし直したもので、世界に通用する持続可能な仕組みにしていこうという思いと、思いやりの心とやさしさの連鎖を広げていきたいという願いが込められています」

 このシステムでは、一般の人に1口2千円で寄付をしてもらう。事前に協定を結んでいた自治体で災害が発生したら、寄付で購入していた備蓄品を被災地に届ける。備蓄品は寄付者が複数から選べる。21年8月からの1期目では、銚子市内の業者が扱う米とサバの文化干しが選ばれた。期間中に災害が起きなければ寄付者に備蓄品が渡される。1期目の期間は3カ月で、436口(計87万2千円)が集まった。

 21年12月からの2期目は期間を1年に延ばし、512口(計102万4千円)が集まった。「パートナーとなる地域とは平常時から話し合い、備蓄品は相手が望むものにしておく」(平野さん)。1期、2期目とも災害は起きず、寄付者に品物が渡された。

 「地域ぐるみのローリングストック」と呼ばれるこの構想は、同大危機管理学部の木村栄宏教授のゼミの3年生と、市内の産官学でつくる「銚子円卓会議」が考えた。

 提案した会社役員の根本吉規さん(45)は震災の時、銚子商工会議所の青年部会長としてボランティアに参加した。19年の台風被害でも県外から多くの支援を受けた。「『共助』の大切さを改めて感じ、地域ぐるみでの被災地支援ができないか」と学生らと仕組みを詰めていったという。

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 支援の仕組みを立ち上げて2年近くがたち、普及拡大の課題もみえてきた。

 広報活動に取り組んできた同大3年生の古川愛梨さん(21)は、「災害を考えるきっかけにしてほしい」と考えている。古川さんは震災で津波被害が大きかった旭市に暮らす。震災の時は小学校3年生で、水道や電気が止まり、備蓄の大切さを実感している。

 4年生の千葉拓也さん(23)は、岩手県一関市にも住んでいたことがあり、当初から活動に参加している。「なかなか理解してもらえないことも多く、一から広めていくのは大変なことだった」と痛感したという。さらなる認知度向上が最大の課題と考えている。

 備蓄品は当初の2品から6品に増えた。さらに商品を提供してくれる地元の取引先企業を増やしていく必要がある。千葉さんは「ビールやコーヒーなど寄付者により関心を持ってもらえるような商品を増やすことも大切では」と話す。

 もう一つの大きな課題は、パートナー地域の拡大だ。今のところ、醬油(しょうゆ)で縁のある和歌山県広川町と、銚子市に隣接する東庄町、香取市の3地域。近い自治体は災害が発生した時に同時に被災する恐れもある。

 台風被害の多い西日本や、南海トラフ地震への危機感がある東海地域の自治体との連携も期待される。木村教授は「円卓会議の力を借りながら広げていきたい。相手地域に同じシステムができれば支援の輪を広げられる」と話す。現在、3期目の年間備蓄を受け付けている。

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