震災12年、山積する課題 報道各社合同インタビューで知事に聞く

構成・宮脇稜平
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 【岩手】東日本大震災からまもなく12年を迎える。ハード面の事業が完了しつつある中、被災した沿岸部は、主要産業である漁業が長引く不漁に苦しみ、コロナ禍や物価高といった新たな難問が追い打ちをかけている。目の前の困難にどう取り組むのか、今後起こりうる災害にどう備えるのか。課題は山積している。報道各社の合同インタビューに応じた達増拓也知事に、現状認識や展望を聞いた。

 ――震災からまもなく12年を迎える所感と、この1年間の復興事業についての評価を教えてほしい

 ハードの整備はほぼ完了し、ソフトについては心のケアやコミュニティー支援に取り組んでいる。

 今年度については、復興道路、復興支援道路、復興関連道路が全て供用開始になったことが大きい。また、東日本大震災津波伝承館(陸前高田市)の来館者数が今年1月末現在で66万人を超えていて、伝承と発信の拠点として確立できたと受け止めている。

 一方で、主要魚種の不漁やコロナ禍、物価高が復興に暗い影を落としている。

 ――沿岸部は復興を遂げたと言えるのか

 大都会と地方では、「復興」(のとらえ方)が、やはり違う。関東大震災阪神淡路大震災では、ビル街が一新されると復興が完了したという感じになる。しかし、地方ではもともと空き地や森林があり、復興がかなり進んでも大都会のような「復興完了感」を、なかなか感じにくい。地方においては、いつ復興が終わったのかというより、目の前の課題に丁寧に対応していくことが大事だ。

 ――被災地の事業者の自立と支援について、どう考えるか

 主要魚種の不漁は大変著しいものがあり、コロナ禍、物価高という問題も重なった。特に被災地は、震災で足腰が弱っているところに新たな危機が到来した格好で、他の地域と比べても影響が大きい。自己責任では済まされず、公による支援が求められる局面だ。

 新たな地域資源の発掘と活用、被災地特有のニーズにあった手厚い支援などを心がけていく。また、商工指導団体とも連携し、いわて中小企業事業継続支援センター相談窓口で、きめ細かく対応していく。

 ――東京電力福島第一原発での処理水の海洋放出に対して、政府にどのような対応を求めるか

 県の基本的な考え方は、(海洋放出が)自然環境や産業に影響を及ぼすものではあってはならないというもの。漁業関係者や沿岸の市町村は丁寧な説明と慎重な対応を求めており、県もそれを国に要望している。

 国は(風評被害対策のための)基金の設置などに取り組んでいるが、関係者からは依然として懸念する声が上がっている。それらの声を受け、県から国に対策を求めているところだ。

 ――日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震について、県が昨年公表した被害想定を踏まえ、対策に今後どう取り組むか

 県と沿岸市町村で減災対策の検討会議を立ち上げた。具体的な対策を検討し、今年の夏ごろまでに取りまとめる。

 市町村の財政負担を軽減する必要もある。県としては新年度、新たに沿岸市町村に対する県単独の補助制度を設ける。津波避難ビルの指定に関わる経費や防災(意識)の普及啓発、自主防災組織を活用した共助の促進など、国の補助制度ではカバーできない取り組みを支援していく。(構成・宮脇稜平)

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