現場が見る異次元の少子化対策 「書類にたどり着けない人」に支援を

中井なつみ
[PR]

 政府は31日、岸田文雄首相が掲げた「異次元の少子化対策」のたたき台となるこども・子育て政策強化の「試案」を発表した。今後3年間を「集中取り組み期間」とし、現金給付の強化、子育て支援の質の向上、全年齢層への切れ目ない支援、男性育休の推進などを網羅的に列挙した。

 今後、開始時期や裏付けとなる財源について首相の下に新たな会議を設けて議論する。6月の骨太の方針までに、将来的な子ども予算の倍増に向けた大枠を示すとした。現場で子どもや若者を支援している専門家は今回の試案をどう見ているのか。

子ども・若者への支援活動を続ける社会福祉士の辻由起子さん

  たたき台に示された様々なメニューを、「絵に描いた餅」で終わらせないことが大切です。

 都市部には社会資源があり、マンパワーもあります。でも、そんな自治体ばかりではありません。国が「理想的なメニュー」を示したとしても、「やりたくてもできない」という自治体は多いのではないでしょうか。都市部だけではなく、地方のこともきちんと見てほしいと思います。

 これまで「あれも、これも……」という形でたくさんの支援や制度がつくられました。でも、その多くは、みずから申し込まないと支援を受けられない「申請主義」です。書類にたどり着けない、申請ができないといった理由で、本当に必要な人にサポートが届いていない状況は、これまでもこれからも続くのではないか、と懸念しています。

 また、子どもの成長は予算や事業計画とは違って、年度末で区切れるものではありません。「金の切れ目が縁の切れ目」にならないよう「切れ目のない支援」が必要です。

 自治体側は、子どもや子育て世帯を適切にサポートできる人材、子ども家庭専門のスペシャリストを育てなくてはいけないと感じます。現状では人材育成やマンパワーが圧倒的に足りていません。

 「こうあるべきだ」という形をどう実現していくのか。その議論も深めていってほしいと思います。(中井なつみ)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    末冨芳
    (日本大学文理学部教授)
    2023年4月1日9時9分 投稿
    【視点】

    子育て罰の国、日本。お役所の書類まみれの申請主義も子育て罰です。妊娠中や子連れで役所に行って書類書いて、その割に支援の中身がショボい、あなたは対象外ですと言われる。 そんなお役所いりますか? マイナンバーカードとアプリで、プッシュ型

    …続きを読む