世田谷区史の著作権は誰に? 執筆者と区、トラブル防止承諾書で争い

松田果穂
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 世田谷区の区史編纂(へんさん)事業に関し、区が執筆者側に著作権の譲渡などを求めている。これに対し、編纂委員の一人で青山学院大准教授の谷口雄太氏が27日、区側に依頼の取り下げを求めていると記者会見を開いて説明した。区側は「トラブルを避けるための取り決めだ」としている。

 同区は2022年の区制90周年を記念し、中世や近現代など各分野の専門家の協力を得て、区史をまとめる事業を進めている。区は今月、事業に携わる編纂委員を委託している専門家らに、23年度の委託に関する「承諾書」への署名を依頼。その中に▽執筆した原稿の著作権を区に譲渡する▽執筆者は「著作者人格権」を行使しない、といった内容が含まれていた。同権は原稿などのコンテンツについて、著作者以外による無断編集などを防げる権利とされている。

 区側の依頼について、谷口氏は「執筆者の署名が入っているにもかかわらず、行政が無断で都合のよい内容に書き換えることが可能になる。区史で歴史修正ができてしまう懸念がある」と主張。懸念の背景について、同事業の一環で17年に冊子「世田谷往古来今(おうこらいこん)」を作った際に「無断で区側に800カ所近くを修正された」と訴える。

 これに対して、区は「本人とやり取りした上で修正しており、無断ではない」と取材に説明。著作権の譲渡などを求める背景として、この冊子の文章や資料を19年にホームページに転載した際、谷口氏から「文章などが無断で使用されている」との抗議を受け、著作権侵害を認めて、その転載部分などの公開を一時中止し、謝罪した経緯などがあるとする。

 当時は二次利用時の権利関係について、執筆者側と取り交わした文書などはなかったという。区の担当者は「今後も文章や表現の細かい修正や原稿の二次利用などは、何度も行うことが想定される。その都度執筆者とやりとりはするが、これまでの経緯を踏まえ、きちんと取り決めをした方がいいと判断した」と話す。(松田果穂)

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