「理解得ないで、なぜ放出」 処理水めぐり、漁業者が経産相に訴え

力丸祥子
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 東京電力福島第一原発事故から12年を迎えるのを前に、西村康稔経済産業相が25日、福島県いわき市を訪れた。いまだ復興の途上にある漁業者と対面し、政府が今春~夏ごろに始める見込みの福島第一原発の処理水の海洋放出について、意見を交わした。漁業者は改めて反対の意思を示した。

 この日の意見交換会には福島県漁連の野崎哲会長ら12人が出席。半数はいわき市、相双の両漁協の若手漁業者らで組織する「青壮年部」の代表だった。

 冒頭、野崎会長は「復興における廃炉の重要性は認識している」としたうえで、「福島の漁業はこの土地の景色とにおいで成り立っている。他の場所で営むことはできない産業だ」として、改めて海洋放出に「反対している」と述べた。

 原発事故後、県沖の沿岸漁業は一時、操業自粛を余儀なくされた。2012年から魚種や漁獲量を絞り、モニタリングを重ねる「試験操業」を続けた。事故から10年を経た21年3月に試験操業を終え、本格操業に向けて動き出したばかりの同年4月に菅政権(当時)が処理水の海洋放出を決定した。

 いわき市漁協の久保木克洋さん(54)は「若い漁業者にやりがいのある仕事だと思ってもらいたい」と訴えた。

 相双漁協の石橋正裕さん(43)は「漁業者の理解を得ていないのに、なぜ放出するのか」と迫った。西村経産相は「漁業者のみなさんが心配、懸念を持っているのは理解している」としたものの、直接的な返答は避けた。

 意見交換会後、石橋さんは「これまでも意見交換会を開いてもらったが、肝心なところは答えない。これでは信用できないし、(漁業者と)意思疎通ができていると思われては困る」と苦言を呈した。(力丸祥子)

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