増え続ける死者、市民も両軍でも 見えない停戦、ウクライナ侵攻1年

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キーウ=喜田尚
【動画】ロシアによるウクライナ侵攻開始から1年
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 ロシアがウクライナに侵攻してから24日で1年になる。「ウクライナ東部で集団殺害が行われている」とする根拠のない主張でプーチン大統領が始めた戦争は民間施設への無差別攻撃や虐殺を伴い、市民の犠牲が増え続けている。占領地の拡大の意図を隠さないロシアに対し、ウクライナは徹底抗戦する構えだ。戦争が終わる見通しは全く立っていない。

 プーチン氏は23日、「祖国防衛者の日」のビデオ演説でウクライナを「我々の歴史的な領土」と呼び、侵攻に加わる兵士は「ネオナチズムと英雄的に戦っている」などと発言した。

 さらに軍備増強を明言。10以上の核弾頭を搭載できる新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」の年内の実戦配備をあらためて表明し、核戦力を誇示した。

 ロシアは「軍事施設だけを攻撃している」と主張するが、病院や学校への攻撃が続発。首都キーウ近郊ブチャでは多数の市民の虐殺が発覚した。

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の21日の発表によると、昨年2月24日からウクライナで犠牲になった民間人は確認されただけでも8006人にのぼる。

 しかし、ロシア軍の占領下に置かれた地域などの犠牲者の正確な把握は困難で、トゥルク人権高等弁務官は、「把握している被害は氷山の一角だ」と述べた。ウクライナ政府は昨年12月初め、市民の犠牲者が「2万人をはるかに超えた」とした。

 インフラや住宅の被害も甚大だ。ロシアは昨年10月から電力施設を標的にウクライナ全土へミサイル、ドローン(無人航空機)による攻撃を繰り返してきた。キーウ経済学院の1月下旬の集計では、12月までに民間インフラが受けた被害は1378億ドル(約18兆6千億円)。うち住宅の被害は540億ドルに及ぶという。

 ウクライナは領土の2割近くをロシアの占領下に置かれた状態が続く。プーチン氏は昨年9月、東部・南部4州の併合を一方的に発表したが、ウクライナ軍は反転攻勢を続け、南部ヘルソン州で州都を含むドニプロ川西岸地域を奪還した。以来、戦況は膠着(こうちゃく)状態に陥ったが、ロシアは昨年末から東部で攻勢を強め、ウクライナは今後の大規模攻勢につながると警戒する。

両軍の死者、数万人か

  ロシア軍は現在、東部ドネ…

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