ロシアのプーチン大統領は21日、米ロ間に残る唯一の核軍縮条約である「新戦略兵器削減条約」(新START)の履行停止を表明しました。ウクライナへの侵攻開始からまもなく1年を控えたこのタイミングでの表明に、どんな意図があるのか。履行停止は米国の戦略や核軍縮にどのような影響を与えるのか。核を含む軍縮・軍備管理に詳しい秋山信将・一橋大教授に聞きました。
――プーチン氏が新STARTの履行停止を表明しました。このタイミングでの表明をどう受け止めますか。
新STARTの履行停止自体は、以前からエスカレーションのシグナルの選択肢として俎上(そじょう)に載せていたと思います。どのタイミングでその選択肢をとるのか見ていましたが、バイデン米大統領が前日にウクライナのキーウを電撃訪問したタイミングとなりました。バイデン氏のキーウ訪問がどれだけ影響したかは判断がつきません。ただ、訪問によって米国が対決姿勢をステップアップさせたと考えれば、プーチン氏がそれに呼応する形でバイデン政権が重視してきた核軍縮・軍備管理の分野で協力的な態度を示さず、むしろ反対の方向に動いていくというシグナルを送ったとも考えられます。これで大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験が成功していれば、一層強力なシグナルとなったでしょうが。
自らの政策と反する「脱退」という選択肢
――履行停止にはどのような意図があるのでしょうか。
「停止」という表現が何を意味するのか、明確ではありません。あえて条約の規定にない言葉を使ったのだと思います。
非武装の航空機による領土の…
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