世界に突きつけられたシリア問題 大地震、国際社会は何をするべきか

有料記事トルコ・シリア大地震

聞き手・新屋絵理
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 トルコ・シリアを襲った大地震から13日で1週間が経ちました。被災地は政治的に不安定な地域で、支援の滞りも指摘されています。地震は各国にどんな影響を与え、国際社会は何をするべきなのか。「中東政治入門」などの著書がある立命館大学国際関係学部の末近浩太教授(中東地域研究)に聞きました。

 ――地震から1週間になります。被災地への支援の滞りをどう見ますか?

 原因は二つあります。一つは地理的条件。被災地が広い地域にわたり、トルコ・シリア両国の首都から遠い不便な国境付近に位置することです。もう一つは政治的な問題です。2011年からのシリア内戦やトルコ軍のシリア侵攻などで非常に不安定な地域です。政治的な問題は人間が作り出したもので、人間が解決できること。できることを何でもやり、一人でも多くの人を救うべきです。

 ――政治的な背景をより詳しく教えてください。

 被災地の住民はほとんどがイスラム教徒ですが、民族はトルコに住むトルコ人、シリアに住むアラブ人、両国にマイノリティー(少数派)として存在するクルド人がいます。それぞれの民族が国づくりを進めてきた半面、クルド人だけ国家がありません。

 トルコ共和国は今年、建国100周年を迎えます。国家というものは100年も経つと、国境やガバナンス(統治)ができあがりますが、クルド人による独立運動のほか、国境問題もくすぶっています。トルコ南部の被災地・ハタイ県も、シリアで発行される地図ではシリア領とされ、論争になってきました。

 こうしたなか、中東の民主化運動アラブの春」の影響で、シリアでも11年、半世紀も親子で独裁を続けてきたアサド政権への抗議デモが起きました。シリアは、中東の中心に位置する地政学的に重要な国です。ロシアやイランがアサド政権を支援し、アメリカやトルコが反体制派を支援して内戦は国際化しました。過激派組織「イスラム国」(IS)も跋扈(ばっこ)しています。地震の被災地であるシリアのイドリブ県は、反体制派が事実上支配している最後の戦闘地域でもあります。

西側諸国が抱えるジレンマ

 ――政治的な問題は、支援にどう影響しますか。

 反体制派の支配地域は、ほぼ…

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