パブリックアートは誰のもの? ファーレ立川から屋外彫刻を考える

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西田理人 編集委員・大西若人

 撤去と保存の間で揺れる東京都立川市のパブリックアート作品を巡って今年1月、作者自身が意見を表明する事態が起きた。公共空間に置かれた屋外彫刻は、いかに管理されるべきなのか。当事者や識者とともに考えた。

作品の所有者が移設を検討したことに対し、美術界から保存を求める声が上がりました。パブリックアートの管理について、どう考えるべきか。記事後半では、美術家の岡崎乾二郎さん、東京大教授の加治屋健司さん、彫刻家・評論家の小田原のどかさんの談話を紹介します。

ファーレ立川の大型彫刻、撤去の危機から保存へ

 かつての米軍基地跡地に、オフィスや公共施設など11棟のビルが集まる再開発地区「ファーレ立川」。ここに1994年、まちづくりの一環として36カ国92人のパブリックアート109点が設置された。アートフロントギャラリー(東京)が基本構想や作家選定などを担ったこのプロジェクトは、多くの作品がベンチや車止めなどの機能を併せ持っている点が特徴とされる。

 その一つが、今回の議論の中心になった岡崎乾二郎さんの大型彫刻「Mount Ida―イーデーの山(少年パリスはまだ羊飼いをしている)」だ。商業施設「立川高島屋S.C.」の入り口わきに置かれた作品は、フェンス状の鉄の構造物が換気口を覆っており、その内側で人の手に触れられることなく樹木が成長している。作家によると「フェンスに囲まれた中の空間は(立川の市民が大切に、守ってきた)誰にも侵されることのできない(忘れてはいけない)場所の尊厳を象徴している」という。

 保存か撤去かの議論は、所有…

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