20日でクラファン達成、鉄道ジオラマ改築へ 岡山の温泉街

礒部修作

 岡山県美作市の湯郷温泉街にある「てつどう模型館&レトロおもちゃ館」。今年12月に開館15周年を迎えることから、老朽化した人気の鉄道模型ジオラマをクラウドファンディング(CF)で集めた資金で改築することになった。「みんなで楽しめるように」と、館長は「趣味の王様」と呼ばれるジオラマづくりのボランティアも募っている。

 2008年12月に開館した平屋の建物は、元々はビリヤード場。地元から「湯郷の新名所に」と期待され、広さ約300平方メートルのうち半分に鉄道模型ジオラマを、京都精華大の学生が半年かけてつくった。レールは全長が22メートル近くあり、新幹線を16両編成で走らせることができる。

 ただ永谷義人館長によると、約14年が経って、使い続けてきたレールは摩耗して車両が脱線したり、電気が流れず止まったりすることもある。改築は通常なら3~5年で行うという。

 このため、開館15周年に合わせて改築することに。昨年9月からCFで資金を集め始め、約20日間で目標額の100万円を達成した。結局、全国の鉄道ファンら155人から108万3千円が寄せられた。

 改築作業は今月から模型館近くに確保した作業場で始める。約1年をかけてジオラマを完成させ、今のものと取り換える。現在のジオラマは架空の街だが、湯郷温泉街を再現する計画だ。

 また現在は二つに分かれているレイアウトを、一つにまとめ1周あたりの距離を長くする。レールの規格は幅9ミリのNゲージだけだったが、幅16・5ミリのHOゲージも新設するという。

 作業は常連の鉄道ファンらが中心に進めるが、永谷館長は「みんなで楽しめるジオラマにするため、一緒に作り込んで愛着の湧くものにしたい」と、一緒に作業するボランティアを募集している。

 問い合わせは模型館(0868・72・0061)へ。

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 模型館では自分の電車を持ち込んで走らせることもでき、大人も楽しめる。連れてきた子どもより親の方が夢中になることもあるという。

 雪がまだ路地に残る平日、仕事の合間に訪れたという鉄道ファン歴約60年のさいたま市の会社員男性(64)は「ジオラマを走る車両を見ているとホッとする」と、自宅で製作中のジオラマをスマホで見せてくれた。

 模型館の入館者数の推移は時代を映す鏡のようだ。模型館によると、開館からこの約14年間、全国から計約22万人が訪れた。

 過去最多の約2万2千人が入館したのは2011年で、サッカーのなでしこジャパンが女子W杯で初優勝した時。美作市をホームタウンとする岡山湯郷ベルの選手2人が優勝メンバーだったことから、相乗効果で伸びたそうだ。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響も大きい。コロナ禍前は年間約1万5千人だったが、21年が約1万600人、昨年は約8千人まで落ち込んだ。少子化の影響もあるといい、永谷館長は「中学生になると部活が忙しくなるので、鉄道ファンをいったん卒業してしまう」とこぼす。

 赤字ローカル線問題の深刻さも見え隠れする。県内の入館者は倉敷市や総社市など県南部の西側のエリアの人たちが多く、JR芸備線や姫新線など赤字ローカル線が走る県北部からは少なく、地域差が顕著だ。

 永谷館長は「総社市などはJR線のほかに第三セクターの井原鉄道もあって鉄道が身近な存在。それに対して、県北は便数が少なく鉄道は不便だからでしょう。もっと鉄道に関心を持ってほしい」と訴える。

 館内には幼い子どもが遊べるプラレールのコーナーもあり、ほかにフィギュアやミニカーなどおもちゃが約3万点展示されている。

11~12日に抽選会

 今月11、12の両日には、岡山市のコレクターがおもちゃをプレゼントする大抽選会を今年初めて開く。コロナ禍前には2カ月で1度開き、約400人が参加する人気の企画だったが、コロナ禍で不定期の開催になっている。入館料(大人400円、小学生150円)を払えば、抽選会への参加は無料だ…

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