福井の北の玄関口に暗雲 芦原温泉駅「アフレア」で市と業者が対立

堀川敬部
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 2024年春、北陸新幹線が金沢から敦賀まで延びる。開業を約1年後に控えた延伸区間の各地では、首都圏などから客を呼び込む計画が進んでいる。だが、つまずきを見せる所もある。開業後、福井県の北の玄関口として期待される芦原温泉駅前だ。

 「オープンに間に合わせることができない。市民や駅利用者、議員に心配をかけていることをおわびする」。今月6日、あわら市議会で同市の中嶋英一経済産業部長が陳謝した。

 問題になっているのは、同駅前のにぎわい施設「アフレア」だ。地上3階建て、延べ1948平方メートルに物販や飲食の店舗とホール、観光案内所などが入る。建物はほぼ完成し、オープンを3月19日に控えるが、集客の核となる店舗が間に合わないというのだ。

 何があったのか。

 市は2020年7月に出店者を募集し、地元の食品会社「三丹本店」が選ばれた。同社は県内の特産品を使ったカフェレストランを計画し、市は補助金4千万円を出すことになった。

 しかし、歯車がかみ合わなくなる。市の説明はこうだ。

 昨年9月、同社は市に「工事費が当初の2倍の1億2千万円になる。市の補助金4千万円に2300万円を追加してほしい」と申し入れた。市は手続きに時間がかかるため断ったという。すると、同社は金融機関からの融資や自己資金、同社が独自に国から採択を受けた国庫補助金などを使って計画を継続すると市に報告してきたという。

 しかし、市は11月10日、同社との交渉を打ち切った。▽不確実な融資や国庫補助金をあてにすると、資金不足時に市が追加の財政支出を迫られる恐れがある▽融資と国庫補助金の結果を待ってからの着工では本体工事が遅れ、アフレア自体のオープンが遅れる。市はそう説明する。森之嗣市長も12月市議会で「(同社との)信頼関係が維持できなくなった」と強調した。

 市は、出店者の選定時に次点だったジェイアールサービスネット金沢(金沢市)との協議を始めた。同社は補助金4千万円を使ってイートインスペースを備えたコンビニをアフレアに作るという。

 一方の三丹本店は反発する。久田恭司社長は取材に、▽コンビニは募集要項のカフェレストランとは異なる▽本来なら市側がやるべき電気設備や空調設備などのアフレアの基幹的な工事まで要求され、補助金の増額にはその負担分と資材高騰の費用が含まれる――などと反論した。

 同社は昨年11月21日、市を相手取り、出店の優先交渉権は同社にあり、他社と契約を結ばないよう求める仮処分を福井地裁に申し立て、対立は深まる一方だ。前川嘉宏副市長は取材に、「新幹線の開業までには解決しなければならない」と語った。

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