局舎取得で取締役会にウソ報告、日本郵便が調査結果や処分「非公表」

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藤田知也

 郵便局の移転先の局舎を郵便局長に持たせる手続きで虚偽報告があった問題で、日本郵便が2021年秋から全面停止していた局長の局舎取得手続きを、今春にも再開する方針を固めたことがわかった。朝日新聞の報道による問題発覚後、日本郵便は過去6年分の局舎の取得経緯を調べ直したが、その調査結果や処分の有無は公表しないとしている。専門家からは説明が不十分との批判が出ている。

 日本郵便関係者によると、昨年12月の取締役会で、局長の局舎取得を再開する方針を決定。公募などの手続きが再開されるという。

 社員が局舎を建てて日本郵便に貸せるのは、地主が同社と直接取引を拒むなど「真にやむを得ない場合」に限る。東京証券取引所の指針に沿って不当利得を防ぐためで、局長の物件取得は取締役会決議や公募もへて例外的に承認することになっている。

 だが、朝日新聞の取材では、局長が自分に土地を譲るよう地主に働きかけて日本郵便との直接取引を妨げたり、支社の担当社員が地主の意向を無視したりした例がめだつ。複数の担当社員は「地主が日本郵便に土地を譲ってよくても、局長にしか譲らない意向だとウソの報告資料を作成した」と証言。報告内容は取締役会が局長の局舎取得を認める根拠とされてきた。

 日本郵便は一昨年の朝日新聞報道後、局長の局舎取得を停止。過去6年で局長が取得した約300局について調べた。昨春の取材には「支社社員による虚偽報告」が複数あったと認めつつ、「調査中」を理由に詳しい説明はしなかった。

 調査完了後の今年1月に改めて尋ねると、日本郵便は不正件数や処分の有無を非公表とし、理由は「第三者がかかわる契約なので」とした。不正件数の公表にどんな支障があるかを尋ねても、説明しなかった。

 支社社員の虚偽報告は「局長の意向をくみ取って対応した」とし、「管理者も含めて厳正に対処した」とする。だが、支社社員の上司らが虚偽報告を把握していたかどうかや、虚偽報告してまで局長の意向を優先した原因は説明していない。

 同社は一方で、局長の不正や処分は一つもないと強調した。局長が自分に土地を譲るよう地主に働きかけた例はあるが、「不適正な事実は確認できない」としている。不正をもとに承認した局長の保有局は、そのまま借り続ける考えだという。

局長が局舎を欲しがる理由は

 日本郵便は21年度に595億円を約1万5千の郵便局の賃料として支出しており、このうち局数ベースでは3割を局長を含む社員らが所有する。

 局長が局舎を欲しがる背景に…

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