第6回昭和と令和の「公共」は違う NHKは説明と議論を 大岡敏孝議員

有料記事NHK考 公共放送を問う

聞き手・平賀拓史
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 岐路に立つ国内メディア業界をどのように支え、維持していくか。総務省ではNHKのインターネット活用やローカル放送網の再編に関する議論が進んでいる。放送行政に大きな影響力を持つ与党自民党の部会「情報通信戦略調査会」の事務局長を務める大岡敏孝衆院議員(50)は、NHKと民間メディアが連携して日本の情報インフラを支えるべきだと話す。

 おおおか・としたか 1972年生まれ。スズキ社員、浜松市議、静岡県議を経て、2012年の衆院選で滋賀1区に自民党から立候補し、初当選。財務政務官や環境副大臣を歴任し、現在4期目。事務局長を務める自民党情報通信戦略調査会は放送・通信分野の政策を議論し、放送行政に大きな影響力を持つ。現在の会長は野田聖子総務相

 ――調査会は昨年8月、NHKのネット活用を予算枠が制限されない「本来業務」にするか、検討の議論をすべきだと総務省に提言しました

 私はそもそも、NHKのインターネット活用は規制できないと思います。

 ネットは報道機関が一人でも多くの方に必要な情報を届けるチャンスになりますし、災害などの緊急時には正しい情報を届ける機能を果たす。また、興味のあること、気になることを検索して、より深い知識を得ることもできる。

 これは残念ながら、放送のみに依存した現在のNHKのやり方では国民に提供できないものです。公共放送としての本来の役目からすると、当然充実をさせるべき分野です。

民業圧迫でなく、むしろどう協力するか

 その上で特に民間の放送局あるいは新聞社が気にしているのは、これが「民業圧迫」になるんじゃないかということ。その懸念を正しく払拭(ふっしょく)していくことが大事だと思っています。

 ――具体的にどうしますか

 NHKも民放も新聞各社も、国民に正確な情報を速やかに届ける、知識や教養に資する情報を提供して国全体、国民全体のレベルを上げていくといった同じ目的のために活動しているはずです。ならば、例えば新聞社で報道や資料の収集ができない部分の一部をNHKが補完するなど、力を合わせてやれることはたくさんあると思います。

 もう一つ、特に必要だと思っているのは、国際的な活動です。

 現在は、日本人で日本のことだけ考えてなんとかなる時代ではない。世界の情勢を日本に届けないといけない。そこでNHKの組織力を、民間の新聞社、民放も上手に利活用してもらう。アメリカとかヨーロッパだけの情報じゃなくて、ロシア、中東、アジア、南米、アフリカなど、民間だとどうしても手薄になりがちな部分を、NHKの取材力ともリンクさせて、国民にひとつでも多くの有益な情報を届ける。逆も同じです。日本の情報を世界に届けること、これをインターネットの力を使わずしてやるのは不可能です。

 ですから私は、NHKのネット活用を「民業圧迫」という理由で規制するのは時代遅れだと思っています。国民にとっての最大利益は何かという視点から、どうやって民間と協力してインターネットでの活動を増やしていくか、を考えた方がいい。

 ――ネットに本格的に乗り出すことでNHKの事業が肥大化するのではという議論については

 昭和の時からあまり変わっていない議論だなと感じています。昭和と令和は、日本の置かれている環境も、技術の進歩も違う。世界の国々との力関係も変わりました。

大岡さんが考える、令和の時代の公共放送とはどんなものなのか。ローカル局との新たな連携の形や、言論空間で既存メディアに果たしてほしい役割など、具体的なイメージを聞きました。

 ネットで世界中の情報が飛び…

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