日銀・白川前総裁が語る10年前と金融緩和「あれが私の限界だった」

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聞き手 編集委員・吉岡桂子
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 物価高が生活を直撃する中、日本銀行による「異次元の金融緩和」の行方が焦点となっている。近く任期満了を迎える黒田東彦(はるひこ)総裁のもと、10年にわたって進められてきた政策だ。前任の総裁で、物価上昇目標を掲げた政府との共同声明に携わった白川方明さんが、声明の内実や今の思い、これから中央銀行や日本が向き合うべき課題を語った。

 ――ロシアのウクライナ侵攻から、もうすぐ1年。エネルギーや食料が値上がりして物価を押し上げ、実質的な所得が減って人々の生活が苦しくなっています。

 「金融政策のあり方が改めて問われています。危機がいついかなる形で起きるかは、誰も正確に予測できない。金融政策は、その現実を所与とした上で運営するしかない。にもかかわらず、約束をした。つまり、今回の世界的インフレ(物価の持続的上昇)は、先進国がデフレ(物価の持続的下落)を過度に懸念して、大規模な金融緩和の継続を事前に約束(フォワードガイダンス)していたこととも無関係ではないと思います」

 「昨年亡くなった恩師の小宮隆太郎・東京大学名誉教授は、1970年代の日本の『狂乱インフレ』について、こう分析していました。当時の激しい物価上昇の原因を、もっぱら中東戦争に伴う石油の供給不足に求めるのは正しくないと。金融緩和で物価が上がっていたところに、石油危機という供給ショックが起きた結果だと。同じことが、今回の世界インフレについてもある程度妥当します」

「在任当時、最も厄介だったのは…」

 ――前年比2%の物価上昇をめざす目標を盛り込んだ、政府と日銀の2013年1月の共同声明から10年が経ちました。当時の総裁として、どう振り返りますか。

 「日本の低成長の原因はデフ…

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