「決める岸田政権」政策迷走の裏に 官庁エコノミストの絶滅危惧状態

有料記事多事奏論

編集委員・原真人

記者コラム「多事奏論」 原真人

 29兆円の巨額歳出を盛った総合経済対策といい、5年間で総額43兆円に膨らむ防衛予算といい、昨秋来、岸田政権はカネに糸目をつけず次々と重要政策を決めてきた。「決められる政治」というより支持率低下に悩む政権のあせりと拙速の結果だろう。

 第一に政策効果が疑わしい。電気料金やガソリン代の高騰に苦しむ家計を助けるためと言えばもっともらしいが、巨額予算をつぎ込めばそれだけ景気を刺激する。物価高を促し、かえって逆効果となる。これはインフレ目標をめざして異次元緩和を続けている日本銀行にも言えることだ。

 防衛費論議にもモヤモヤ感が残る。国家安全保障にかかわる装備を借金でまかなうわけにはいかないと政権が考え、増税案をもち出したところまではわかる。だが年間3兆円超の追加財源が必要だというのに増税目標額は1兆円にすぎず、残り2兆円はどうするか。税外収入や剰余金などで捻出すると言うが、大半は1回限りの財源だ。いずれ税に置き換えざるをえない。そこを語らずして重大政策を決めたのは、国民を欺く行為と言われても仕方ないだろう。

 財政や金融政策は本来は理論やデータ分析の規律が働く分野だ。にもかかわらず、これほど矛盾や欺瞞(ぎまん)に満ちた政策がまかり通るのはなぜか。政策決定に最低限の良識とまともな論理を回復させる必要がある。

 かつてマクロ政策の総合司令…

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