メディア空間考 藤えりか
取材に応じてもらい、話を聞き、さあ写真を撮ろうとした時に、「写真はちょっと……」と言われることがある。
取材は、言葉を書き取るだけでなく、映像に残すことも大事だ。でも、「話すのはいいけど撮られるのは嫌だ」という人もいる。そもそも、当局に撮影を禁じられたり、撮影に危険を伴ったりする場合も多々ある。
だからこそ、困難を乗り越え世に出た報道写真を見るたび、敬意でいっぱいになる。
それを表彰する取り組みの一つに、世界報道写真財団(本部・アムステルダム)のコンテストがある。
米メディアへの掲載を条件とするピュリツァー賞と違って国・地域を問わないうえ、受賞作品を世界各地の有志と共催する写真展で展示しているのも特徴だ。写真展はコロナ禍前は世界約120カ所で開催。日本でも定期的に開かれ、21年までは朝日新聞社が共催してきた。
私もたびたび足を運んで受賞写真に見入っては、世界で何が起きているのかを感じ、こんな現場をどうやって撮れたのだろうかと思いをはせ、背筋が伸びた。
その写真展が、開催直前や期間中に突如打ち切りになる事態が、アジアを中心に続いている。
開幕の朝、ベトナム当局は中止を命じた
直近は12月9日、ベトナム…