調査前倒しに早くも反発、混迷深める北陸新幹線の大阪延伸

小田健司
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 福井県などが求めていた北陸新幹線の敦賀―新大阪間の着工の見送りから2週間。開業の遅れを懸念する地元の国会議員ら与党の働きかけを受け、国は一部の調査などを前倒しして予算化したが、ルートが通る京都府内では、それに対しても反発が起きている。延伸をめぐる状況は混迷を深めている。

 27日、国土交通省の上原淳・鉄道局長が福井県庁で杉本達治知事らに着工見送りを改めて伝え、こう説明した。「(事業による)環境への影響に懸念が示されたことで当初計画より遅れが生じた。施工上、大きな課題もあり、着工に向けた条件が整わなかった」

 延伸をめぐっては、2020年に与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)が「23年度当初」の着工を決議し、国交省も「重く受け止める」としていた。PT委員長は高木毅衆院議員(福井2区)が務めている。

 それが着工できなかったのは、沿線となる京都府内で環境アセスメントが進まなかったからだ。計画では、京都府ではルートの大半で、地中深くにトンネルを通す。残土の処理方法も決まっていない。そのため、環境破壊や地下水への影響を懸念する住民らが反対運動をしている。

 一方、早期着工に失敗したPTや国は、延伸計画の認可前にもかかわらず、一部の地質調査などを前倒しして進める方針に転じた。

 だが、京都府内では早くも、それらに対する反発の声が高まっている。京都府の西脇隆俊知事も16日の記者会見で「施工上の課題や環境の保全について、国は適切に対応してほしい」と述べるなど、府内の懸念に留意する姿勢を崩していない。

 27日に福井県庁を訪れた上原局長は、杉本知事に前倒しの調査費など12億円を盛り込んだ政府の関連予算案についても説明した。

 面談後、報道陣の取材に応じた杉本知事は「(決議に対する)着工の遅れは極めて遺憾だと申し上げた。沿線の地域には色んな声があり、事業そのものの意義を十分に説明していただきたい」と述べた。

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この記事を書いた人
小田健司
ネットワーク報道本部(大阪・堺支局)|地方行政や町ダネ、裁判など
専門・関心分野
権力監視、原発、公共事業、ボブ・ディラン