うんざりだ、人権を「多数決」で決める無関心な社会 石原燃さん寄稿
寄稿 劇作家・石原燃さん
年末にまた嬰児(えいじ)の遺棄事件が起きた。
2022年に入ってから、20件目の事件だった。私がネットで検索して数えただけなので、見落としているものもあるかもしれない。いずれにしろ、氷山の一角だろう。コインロッカーベイビーが社会問題になったのは1970年代のことだが、その後、問題が解決したわけではなく、いまもこうして事件は起き続けている。
いしはら・ねん 1972年生まれ。性暴力、「慰安婦」問題など社会問題を描く。作品に戯曲「彼女たちの断片」「蘇(よみがえ)る魚たち」「白い花を隠す」、小説「赤い砂を蹴る」など。
こういう事件が起きるたび、事件そのものの痛ましさとは別に、ネットニュースのコメント欄やSNSの反応に気分が重くなる。一番多い反応は、逮捕された「女性」が反省しているかどうかジャッジしようとするもの。反省している様子なら非難する人は少なくなるが、「情報弱者」だと笑われたり、気の毒だと同情されたりするのは変わらない。そこにあるのは「罪」を犯した人に対するゴシップ的な興味だけで、公的機関の責務や、医療や法律の欠陥が議論になることはほとんどない。つまりは、その人の人権が侵害されているという視点が皆無なのだ。
なかには、「男性も逮捕され…
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