「バチカンと日本 100年プロジェクト」シンポジウム
バチカンにある日本関連の歴史資料を研究する「バチカンと日本 100年プロジェクト」(主催・角川文化振興財団、共催・朝日新聞社)が2022年11月、3年にわたる活動を取りまとめたシンポジウムを上智大学(東京都千代田区)で開いた。19年秋のローマ教皇来日を契機に企画され、新型コロナの広がりで思うように現地調査ができない時期が続いたが、制約の中でも新たな発見があった。シンポジウムでは450年を超えるバチカンと日本の交流の歴史をひもといた。(西田健作)
バチカンと日本 100年プロジェクト
このプロジェクトは、宣教師が送った文章や近代の外交関係資料など、バチカンが所蔵する日本関係文書に光を当てて、両国の交流史を調査研究するもの。今後100年のさらなる友好に向け、バチカンの協力を得て、日本の研究者が中心になって調査している。成果を発表する公開シンポジウムをこれまで3回実施してきた。
東北のキリシタンからの奉答書は3通あった
研究代表を務める川村信三・上智大学教授は22年9月、イタリア・フィレンツェで、江戸時代初期に東北のキリシタンがローマ教皇に送った「奉答書」を新たに見つけた。シンポジウムでは「日本信徒の教皇パウロ5世宛『奉答書』 新発見史料を読み解く」と題して、同じ内容のものが3通あることが分かった東北の奉答書について、発見の経緯と、その詳細を報告した。
奉答書は、教皇パウロ5世(在位1605~21年)が日本の信徒を励ますために送った書簡に対して、日本から感謝を伝える返信。1620~21年に近畿、長崎、東北など全国5地区から送られた。バチカン図書館は東北のものだけ2通、あとは1通ずつ所蔵している。
川村教授は「なぜ東北の奉答書だけが2通あるのか深く考えたことがなかった。だが、今春、フィレンツェで3通目が見つかったという情報が寄せられたため、現地に行ってこれら3通を比較した」と話した。
3通目はフィレンツェのサン…