「なぜわびない」に気色ばんだ教団 金平茂紀さんが感じる憂いと希望

有料記事

聞き手・中沢絢乃
[PR]

 ジャーナリストの金平茂紀さん(68)がこの秋、TBS系「報道特集」(土曜午後5時半)のメインキャスターを退いた。40年以上続く実績が評価されて昨年のギャラクシー賞報道活動部門大賞も受けた番組でキャスターを12年間、過去には「筑紫哲也NEWS23」の編集長なども務めたTBSの報道の「顔」。3月に話題を呼んだベラルーシのルカシェンコ大統領の単独インタビューなど、今も国内外で精力的に取材している金平さんに、番組やメディアについての思いを聞いた。

 《最後のレギュラー出演となった9月の「報道特集」では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を特集。自ら教団の会見に参加し、厳しい質問を浴びせた》

 教団の3回目の会見に参加しましたが、若い記者たちはみんな優しいというか、おとなしいというか……。質問の最後に「教えてください」と言うんですね。学校の生徒が先生にお願いするような言葉遣いはおかしいと思います。

 会見する側と問いただす側は対等でなければいけない。総理のぶら下がりなどでもそうです。僕らは市民の知る権利を代行しているわけですから。

 教団はフリーランスを排除して、1社につき記者1人とカメラ1人までと制限した。質疑も新聞社と通信社から、その後にそれ以外のメディアの質問という進行をした。おかしなことです。質問で僕はそれを最初に言いました。こんなに社会的な関心がある問題なんだから、相手が作った土俵を簡単に受け入れるのはよくない。それぐらい緊張関係がないとだめなんです。

 会見で僕は続けて「実際に被害を被った方々に対して、なぜわびないんですか」と言いました。そうすると向こうも気色ばんで、空気が変わった。

 失礼な言葉遣いはいけないが、相手がちゃんと答えなかったら「なんで答えないんですか」とやり取りしないといけない。相手から「お前は話を聞くだけでいいんだ」と思われる関係になってはだめ。記者会見はそういう部分がめちゃくちゃ大事なんです。

強大な政権下でメディアと政権の距離が近付いたことを危惧する金平さん。「恩師」と呼ぶ筑紫哲也さんから受け継いだ精神と、オールドメディアの存在意義について語ります。

「安倍さんにすり寄っていった記者も」

 《取材者としての役割を果たすため、取材対象との距離感を気にかける。特にこの10年ほどで、メディアと政権の距離が近くなったと危惧している》

 取材対象と取材者は、緊張感をもって対等に厳しくやり合わないといけない。でも、大物の政治家や官僚、スポーツ選手といった相手にへこへこし、ご褒美にネタをもらって言いなりになる記者も残念ながらいます。

ここから続き

 政治取材の現場では、安倍晋…

この記事は有料記事です。残り2230文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません