最初は弁当箱サイズだったSuica 世の中を動かした開発秘話

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聞き手・小村田義之
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 「ピッ」という音とともに駅の改札を抜け、コンビニの支払いにも使えるJR東日本のICカード乗車券「Suica(スイカ)」。システム開発を指揮したJR東日本メカトロニクス顧問・椎橋章夫(しいばしあきお)さんに聞くと、鉄道会社の小さな部署が、会社を動かし、世の中を動かすストーリーが浮かんできました。

リレーおぴにおん 「鉄道150年」

 スイカはJR東日本が2001年に発売し、モバイルスイカを含めるとこれまで9千万枚以上が発行され、電子マネーとしても利用されています。

 私は埼玉県の農家の生まれで、工業高校を出て埼玉大学に行きました。ほんとうのことを言うと飛行機の機関士になりたかった。だけど当時は採用していなかったので同じ乗り物系の国鉄に行きました。

 国鉄でも、ほんとうは車両の設計をしたかったんです。「あの特急は自分が設計したんだよ」と言いたかった。でも実際に担当したのは工場での検査・修繕でした。車両のボルトをハンマーでたたくと、ゆるみが全部、音でわかります。

 1987年の国鉄の分割・民営化後、改札機や券売機、エスカレーター、エレベーターなど駅のお客様が使う機械設備の部署に異動になりました。ずいぶん小さい部署に来たなあと思ったけど、「小さい方が好きなことをできるかな」と。ただ、鉄道会社だから、機械設備の部署にばんばん予算がつくわけではない。これはもう、しょうがないな、と思いました。

 それでも90年に、駅員が立って行っていた改札業務は磁気式の自動改札機に切り替わり、10年後の2000年には「老朽取り換え」が必要。その時期が迫っていた。「予算をとるチャンスだ」と動き始めました。

初期は注射器で蒸留水を注入

 すると、本社の下のフロアで…

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この記事を書いた人
小村田義之
政治部|外交防衛担当キャップ
専門・関心分野
政治、外交安保、メディア、インタビュー