「パパががんになったのは」元厚労省がん対策推進官がかみしめた幸せ
厚生労働省の医系技官、丹藤昌治さん(50)は2020年11月、左肺にがんが見つかった。12月には、腰椎(ようつい)への転移が強く疑われ、ステージ4と分かった。
完治を目指せる治療はないのか。セカンドオピニオンで訪れた国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)で、他の臓器へ少数の転移しかない「オリゴ転移」の可能性があり、手術ができるかもしれないと、説明を受けた。
受診に付き添っていた麻酔科医の妻(43)が、呼吸器外科長の渡辺俊一医師らに申し出た。
「肺の手術と腰椎の手術を一緒にお願いできませんか」
腰椎への転移は、脊髄(せきずい)から離れた端の突起の部分で、安全に治療できそうな位置だった。中央病院では、放射線治療を考えていたが、整形外科にも相談し、安全に切除できそうだとのことで、同じ日に、肺に続いて腰椎も手術することにした。
入院前、子どもたちに話そう
入院で数日、家を留守にする。パパがいないと、子どもたちが不安になるかもしれない。
「子どもたちに話さなければ」
現在の国のがん対策推進基本計画には「がん教育」が盛り込まれている。
子どもが健康と命の大切さについて学び、がんに対する正しい知識、がん患者への理解及び命の大切さに対する認識を深めることが大切である――。
丹藤さんががん対策推進官として、とりまとめに奔走したものだ。
1対1で、向き合って話ができるよう、長女とは塾に迎えに行ったとき、長男とは一緒にお風呂に入っているときに、何度かに分けて、2人が理解できるような言葉で話した。
「パパの胸の肺というところ…