「ヤクザはETC使うな」高速道で規制強化へ 組幹部は「徹底抗戦」

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藤田知也

 高速道路会社6社が、暴力団の規制強化に動き出す。近い将来に「ETC専用化」を見据えるなか、暴力団員がETCを使える手段を封じ、現金での利用に制限する方針だ。渋滞緩和やコスト削減にも役立つはずのETCを使わせない理由はなにか。暴力団側は徹底抗戦の構えだ。

 指定暴力団6代目山口組系の組幹部が10月下旬、名古屋市内で記者の取材に応じた。愛知県内の高速道を毎日のように走っているといい、こう予告していた。

 「高速を車で走るのに、やましいことは何もしていない。身分を偽るウソをつくような『ヘタうち』もしていない。それでも暴力団員であることだけを理由にETCを使わせないというなら、徹底的に争うことになる」

 いったい何があったのか。

ETCから暴力団を締め出すメリットや目的はなにか。膨らむコストはだれが負担するのか。公共サービスの暴力団排除はどうあるべきか。鉄道や携帯などの事例とともに考えます。

「組員が加入していい?」コールセンターに尋ねてみたら…

 高速6社が規制を強めるのは、デポジット式のETCパーソナルカード(ETCパソカ)。上限額に応じた保証金を預かり、実際の利用料は銀行などの口座から引き落とす仕組みだ。クレジットカードを持たない人でもETCが使えるようにするサービスで、暴力団員にも広く利用されてきた。

 規制強化のきっかけは、愛知県警が9月に暴力団員9人を逮捕したこと。暴力団員であることを隠してETCパソカの交付を受けた詐欺の疑いだとされたが、いずれも不起訴処分となった。冒頭の組幹部もその一人だ。

 規約では、利用者が暴力団やその関係者と判明したら、「会員資格を取り消すことができる」と定めている。ただ、カード発行を拒む対象に「暴力団員」を明記しておらず、発行時に暴力団関係者かどうかの確認もしていなかった。

 逮捕された9人は、2015~21年にETCパソカに加入。事前に弁護士と規約を読み込み、コールセンターに「暴力団組員が入会しても大丈夫か?」と尋ね、「大丈夫」と言われた者もいた。名古屋地検もそうした事情を把握し、不起訴にしたとみられる。

 だが、話はそこで終わらなかった。

あと8年で全国の高速道がETC専用に

 高速6社は、不起訴となった…

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