「夫夫(ふうふ)」を夢見た「いくさん」 最期に待ち受けた現実

有料記事

田中恭太

 「私は今年、還暦になったゲイ男性です」「最期の時は、『夫夫(ふうふ)』となったパートナーの手を握って天国に向かいたい」

 2019年春、1人の男性が東京地裁の法廷で夢を語った。同性のカップルが結婚できない現状はおかしいと訴えていた。

 しかし21年1月、男性は帰宅中に倒れ、判決を見届けることなく、息を引き取った。

 佐藤郁夫さん。享年61歳。丸めがねをかけ、周りからは「いくさん」と慕われた。

 裁判に出していた書面には、いくさんの思いがあふれていた。

「おかま」と呼ばれた時代

 いくさんは1959年生まれ。中学生の頃、初めて同性にひかれると感じた。

 《当時、男性を好きな男性が「おかま」と呼ばれていて、気持ち悪いと言われ、あざ笑われている姿を見て、本当に苦しい気持ちになりました》

 学生時代、サークルやバイト…

この記事は有料記事です。残り2094文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
田中恭太
東京社会部

裁判、デジタルプラットフォーム、独占禁止法、ロック音楽

Think Gender

Think Gender

男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]