「現れて、抱きしめて」 自死した父、法廷に立った16歳の娘の願い

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 2007年に新潟市水道局の男性職員(当時38)が自殺したのは上司のパワハラが原因だったとして、遺族が市に約7900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、新潟地裁(島村典男裁判長)で言い渡される。男性の自殺はパワハラによる公務災害に認定される一方、市はパワハラの存在を否定し、全面的に争っている。提訴から7年余り。遺族は同様のことが二度と繰り返されぬ世の中になるよう願っている。

上司の言動「著しく理不尽ないじめ」、公務災害と認定

 遺族側によると、上司によるパワハラは06年夏ごろ始まり、年明け前後には激しくなった。07年3月、男性がそれまで経験のなかった市発注工事の単価表作成などの担当になると、一定の専門知識が必要な業務なのに助言や指導をしないまま、仕事が進んでいないことを同僚の前で罵倒したり不要な作業をさせたりしたという。

 この頃、男性は食事が取れない、眠れないなどの精神疾患を発症。「自分なんていない方がいい」などとこぼすようになり、同年5月に自ら命を絶った。携帯電話や自宅のパソコンには、「いわゆるいじめ」「日を増すごとに悪化してこれ以上耐えられない」「どんなにがんばろうと思っていてもいじめが続く以上生きていけない」などとするメモが残されていた。

 地方公務員災害補償基金新潟市支部審査会は11年11月、遺族の訴えを認め、上司の言動は「著しく理不尽な『ひどいいじめ』だった」と判断。精神疾患の発症と自殺につながったとして公務災害と認定した。

訴訟で新潟市はパワハラを否定

 翌12年2月、市は賠償と関係者の処分を行う考えを遺族に伝え、公務災害の審査に使われた同僚の陳述書の提出などについて協力を要請。陳述者の不利益な取り扱いをしないなどの条件付きで遺族が渡したところ、内部での聞き取り調査の結果としてパワハラはなかったとそれまでの姿勢を一転させたという。

 これを受け、遺族側は15年9月に提訴。パワハラによる自殺に加え、聞き取り調査で圧力をかけてパワハラの隠蔽(いんぺい)を図ったと主張している。

 これに対し市側は、管理職による聞き取り調査で確認できなかったとしてパワハラを否定。上司も証人尋問で、「自分に至らない点があったとは思っていない」と述べた。

 さらに市側は、男性の経歴などに照らして業務は特別に困難な内容ではなく、上司や同僚がフォローする態勢も整っていたと反論。安全配慮義務違反はないとしている。

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