「悔しいです」と言えない可愛さ 元ザブングル松尾さんの鉄道パーカ
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パーカの前後いっぱいに様々な数字が書かれている。いったい、どんな意味があるのだろうか。デザインしたのは、元お笑いコンビ「ザブングル」の松尾陽介さんだ。
NHKの朝ドラ「あまちゃん」の大ファンだったという松尾さん。そこに、数字の謎を解くヒントがあるらしい。
10月31日、そのパーカを着た松尾さんが、岩手県久慈市の会場に現れた。自分でデザインしたパーカをお披露目する発表会だった。
「『悔しいです!』とは言えないくらい可愛い」
相方だった加藤歩さんのお得意のギャグを入れながら、不思議な数字が並ぶパーカの出来栄えを誇った。
松尾さんによるパーカ作り企画は、昨年3月に芸能界を引退して、起業した際に始まった。
松尾さんは約8年間、久慈市の縫製会社「プランタンいずみ」の寿松木(すずき)亨社長とメールのやり取りを続ける仲。芸能界にいたときの仕事で知り合った。それから一度も会うことはなかったが、テレビに出演するたびに寿松木さんからメールをもらう「メル友」だ。
その縁で、コロナ禍に直面していた寿松木さんが松尾さんにデザインを依頼した。「コロナの影響で、縫製の仕事は減った。でも、メイド・イン・ジャパンの技術力は無くしちゃいけない。何か新しいことを始め、技術を守ろう」
デザインを引き受けた松尾さんにとって、久慈市といえば「あまちゃん」のイメージしかなかった。そして、ドラマに出てきた鉄道のモデルとなった「三陸鉄道(三鉄)」をテーマにしようと思いついた。
美しい岩手の沿岸を走り、東日本大震災で打撃を受けたものの復活を果たした、地域に愛される三鉄。
工程ではデザインのテーマだけでなく、縫製やプリントも地元色を出し、地域の業者が手がけた。寿松木さんは「職人のこだわりが詰まった、納得できるパーカになった」と胸を張る。
さて。並ぶ数字は何か。
大好きなあまちゃん、大好きな三鉄。
「時刻表の数字が並んでいたら面白いな」と考え、三鉄の久慈駅を出発する列車の番号と出発時刻を表したという。パーカの赤字で書かれた部分は、始発と終電の時刻などを示した。
松尾さんは「このパーカを通して三鉄、そして久慈を知ってもらい、盛り上げていきたい」と話す。
パーカは三鉄のオンラインショップや宮古駅(宮古市)隣の土産店で買えるほか、久慈市のふるさと納税の返礼品にもなる予定。1着1万1千円(税込み、サイズはM、L、XL)で、まずは80着を販売するという。