海底の泥からマイクロプラスチック、過去50年超の汚染状況明らかに
海洋汚染の大きな要因となっている微細な「マイクロプラスチック」について、愛媛大学などの研究グループが、海底に堆積(たいせき)した泥から過去半世紀以上にわたる汚染状況を明らかにした。マイクロプラ汚染の長期的な変化が分かる記録はこれまでになく、汚染の経過を再現できる計算モデルを開発することで、将来的な汚染の広がりの予測にも役立つと期待されている。
研究成果を発表したのは愛媛大理工学研究科の日向(ひなた)博文教授らのグループ。2017~19年に、別府湾(大分県)の水深約70メートルの海底に堆積(たいせき)した泥を採取し、0・3~5ミリのマイクロプラを抽出した。
別府湾の海底は海流の影響を受けにくく、積もった泥がかき混ぜられにくいことから、泥は年代順に層のように堆積している。このため、地質調査に適していることで知られている。
今回は鉛の一種を使って泥の層ごとの年代を特定し、同時にマイクロプラが泥にどれくらい含まれているかを調べた。
分析の結果、最も古いマイクロプラは1960年代前後の層から見つかり、その数は年代が下るに従って増えていた。1年間に沈んだ個数を1平方メートルあたりでみると、60年代は10個程度だったのが、2010年代には200個ほどになっていた。プラスチックの種類別にみると、ポリ袋や洗剤容器に使われるポリエチレン、人工芝などに使われるポリプロピレン、発泡スチロールに代表されるポリスチレンが大半を占めた。
マイクロプラの堆積量を分析すると、20年周期で増減を繰り返しており、植物プランクトンの増減と連動していることも分かった。日向教授によると、マイクロプラの比重は海水よりわずかに小さいため、通常は浮いているが、プラの表面に植物性プランクトンの集合体(バイオフィルム)が付くことで比重が大きくなって沈むという。
年代ごとの堆積量が分かったことで、マイクロプラが沈む際の速度も世界で初めて推測できた。1日に沈む速度は50~60メートル程度とみられ、水深が最大約70メートルの別府湾なら1日程度で海底に達するという。研究グループは別府湾の複数の箇所で海面のマイクロプラの濃度を調べ、10年代に海底に積もった量との関係から沈む速度を割り出した。
今回の研究成果について日向教授は、「長期的なマイクロプラスチックの堆積データはこれまでほとんどなかった。沈降速度の推測やプランクトンとの関係とともに、マイクロプラ汚染の計算モデルの開発や将来予測に役立つだろう」と話している。
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