「拒否権は2カ国以上で」安保理改革案提言 国連元広報官・植木教授
国連安全保障理事会のメンバーであるロシアが国連憲章に違反してウクライナに侵攻したことで、安保理の改革を求める声が高まっている。だが、安保理の抜本的な改革にはロシアや中国を含む五つの常任理事国すべての同意が必要となり、ハードルは極めて高い。国連の広報官を務めた植木安弘・上智大大学院教授が、安保理改革の具体的な道筋について提言を寄せた。
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ウクライナに侵攻したロシアは、常任理事国としてふさわしいのか。正当性はもちろん疑われるが、その地位を奪うことは憲章上、できない。国連加盟国の追放や資格停止には常任理事国の同意が必要であり、ロシアが拒否権を使うことができるからだ。
ウクライナ侵攻が始まってから、国連は総会でロシアの行為を非難したり、国連人権理事会における理事国としての資格を停止したりしてきた。国際民間航空機関(ICAO)の選挙でもロシアを理事国に選ばず、孤立化をはかっている。国際司法裁判所でも、「ウクライナ東部にいるロシア系住民に対するジェノサイド(集団殺害)」といったロシアの軍事侵攻の口実は否定されている。人道支援活動でも国連や国連の専門機関が重要な役割を果たしている。
それでも、「国際の平和と安全の維持」について一義的な役割を与えられているのは安保理だ。では、どのように改革すればいいのか。
米国のバイデン大統領は9月にあった国連総会の一般討論演説で、常任理事国と非常任理事国の双方とも拡大すべきで、米国が長年支持している国々(日本やドイツなど)や、アフリカと南米アメリカ・カリブ海地域からも常任理事国を選出することを提案した。岸田文雄首相も総会演説で、「文言ベース」の安保理改革交渉を開始すべきだと訴えた。
安保理改革の議論は1994年から30年近く議論されてきた。だが、実現の見通しは立っていない。
大きな理由が、常任理事国の…
- 【視点】
傾聴に値する提案。どこから入っても困難な道だが、順序が大事。最初に安保理拡大。そのあとに拒否権制限。 ウクライナへの侵略戦争を前に、国連の安保理は(予定通り)機能していない。一方で、総会はそれなりに機能しているとか、食糧危機への対応を
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