安倍氏を感服させた「かませ犬」 追悼演説の野田氏、ため息の理由
あの日から10年。「敗軍の将としてずっと、『かませ犬』で……」。
安倍晋三元首相の国葬が行われた翌日の9月28日朝、千葉・西船橋駅前。街頭で有権者らに活動報告をまとめたチラシを配り終えた野田佳彦元首相は、深くため息をつき、周囲にこう漏らした。
あの日とは、2012年11月14日。歴史的な党首討論が開かれた日のことだ。
09年に自民党から政権奪取を果たした民主党だったが、徐々に失速。党内政局も重なり、野田政権は機能不全に陥っていた。対するのは、自民党総裁選を制して勢い付く安倍氏。「野田総理は確かに約束した。『近いうちに信を問う』と」と語気を強め、衆院解散を迫った。
多くの議員が詰めかけて騒然となるなか、表情を変えなかった野田氏は突然言い放った。
「約束してほしい。(国会議員の)定数削減は必ずやる。決断いただけるなら、今週末に解散する」
解散を引き出したはずの安倍氏、自民幹部は驚きを隠せないでいた。
その後の12年12月の衆院選で民主党は大敗し、3年3カ月で政権の座から転落。自ら引導を渡したとも映る野田氏は、民主内で痛烈な批判を浴びた。逆に安倍氏は2度目の首相の座をつかみ、長期政権へとつなげていった。
「仇(かたき)のような政敵」
野田氏は今、安倍氏をこう評する。両氏は1993年衆院選で初当選した同期。単純には言いあらわせない関係性があった。
党首討論を控えた安倍氏。番記者に戦略を語りながら、こんな思いを打ち明けたことがある。「野田さんは民主党にいい印象を与えるんだよ。見ている人に野田さんをいじめた印象を与えるのはよくない。だから『好きですよ』というわけだ」
そして続けた。「実際、おれは野田さん嫌いじゃないんだよ」
政治的立ち位置の違いから安…
- 【視点】
野田氏の追悼演説に関しては識者の方達の論評をきちんと読んでいただくとして、私はまったく違う視点から述べてみたいと思います。 私の見方は「野田氏のプロレス好き」という点からです。 追悼演説に白羽の矢が立ったとき、野田氏はブログで「
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