過去最少となった出生数 経済・雇用環境の改善含め社会全体で変革を

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あすを探る 山口慎太郎・東京大教授

 出生率の低下が止まらない。コロナ禍の影響があったとはいえ、2021年の合計特殊出生率は1・3と低く、出生数は81万ほどで過去最少だ。これは、次世代の社会・経済を支える人数が少ないということに他ならない。多くの引退世代を少ない現役世代が支えることになるため、年金をはじめとする社会保障制度の維持が困難になり、給付の切り下げにつながりうることを意味する。

 出生率を少しでも高めるために何ができるだろうか。政府が取り組むべきは大きく三つある。第一に、子ども・子育て支援政策の充実だ。長年、少子高齢化の問題が指摘されてきたにもかかわらず、日本政府は十分な子育て支援を行ってこなかった。国内総生産(GDP)に対する子育て支援支出の割合は1・79%で、先進国平均の2・34%より大幅に低く、トップのフランスの3・60%の半分以下だ(〈1〉)。児童手当や保育所の拡充といった子育て支援策が出生率を高めることは、多くの研究によって示されてきた(〈2〉)。子育て支援の規模を大きくするとともに、学術的な知見に基づいて、有効性が見込まれる政策を実施すべきだ。

 第二に取り組むべきは、社会と家庭における男女共同参画の推進である。特に男性の家事・育児参加を進める必要がある。男性が担う家事・育児の割合が高い国では、出生率が高い傾向がある(〈3〉)。子育てに伴う負担を母親だけが担わされるような国では、女性は子どもを持つことに躊躇(ちゅうちょ)する(〈4〉)。日本の男性は夫婦が行う家事・育児のわずか15%ほどしか担っておらず(〈5〉)、先進国で突出して低い。ここには、大きな改善の余地がある。

 現状を改める上でカギとなり…

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