陸羽東線は「欠かせない」利用促進策など議論 沿線の大崎市が検討会
利用客が特に少ない赤字路線としてJR東日本が公表した陸羽東線について、沿線の宮城県大崎市が20日、鉄道のあり方を議論する検討会議を初めて開いた。鳴子温泉郷といった観光地にとって存続は最重要課題で、利用促進などの提言を年度内にまとめる。
会議にはJR東や東北運輸局、県、鳴子温泉郷観光協会の関係者ら計約20人が出席した。冒頭、伊藤康志市長は陸羽東線について「市民の通学、通勤、買い物など生活の支え、観光地へ誘客する路線でもあり、なくてはならない」としたうえで、「存続を前提とした路線の魅力発信や経営の安定化について問題意識を共有したい。次なる100年、確かな歩みに向けての第一歩にしていきたい」とあいさつ。その後は非公開で、2時間余り意見を交わした。
取材に応じた伊藤市長によると、会議では「車利用が多く鉄道が使いにくい」「二次交通が不便」といった意見のほか、「高齢化社会に向け駅施設などのバリアフリー化が必要」などの要望も出たという。
オブザーバーとして出席したJR東日本東北本部の箸方(はしかた)稔企画課長は「地域の皆様と一体となり持続可能な公共交通について話し合いを進めていきたい」と答えるにとどめた。
国土交通省の有識者会議は7月、1キロ当たりの1日平均乗客数(輸送密度)が「1千人未満」を目安に、見直しに向けてJRと沿線自治体が協議すべきだと提言していた。
この中で、鉄路をバス専用道路にする「バス高速輸送システム(BRT)」への転換や、施設や設備は自治体が保有し、鉄道会社は運行のみ担う「上下分離方式」の導入などが示された。鉄道の廃止は前提とせず、3年以内に合意して結論を出すよう求めた。
市の検討会議はこれを受けたもので、物流も含めた沿線の利用促進や駅舎の環境整備、住民の意識醸成などを議論し、年度内に提言をまとめる。他の沿線自治体との連携や、市職員に定期的な利用を促す実証実験も検討する。
会議に出席した地元観光協会の菊地英文事務局長は、「観光のまちとして鉄路の存続は最重要。関係機関と同じテーブルで協議できることには意義がある」と期待を込めた。