勉強してくれたら選挙応援…町議が訪ねると 施設入り口に教団の名前

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 国が家庭教育の基本方針を定めるという「家庭教育支援法」の制定を求める意見書が、全国各地の地方議会で可決されている。家庭教育は、宗教法人「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」側が重視する。意見書を可決した自治体が最も多い熊本県では、教団の友好団体の幹部を務めている男性が立ち上げた団体が、意見書を求める請願の提出者になっていた。

 意見書は7日までに全国34の地方議会で可決され、衆議院に提出された。熊本県は2012年、全国で初めて家庭教育支援条例を制定しており、同法制定を求める意見書は18年3月から22年3月に、県内7市町村の議会で可決された。

 その一つ、20年6月に可決した芦北町の議会事務局を訪ねた。意見書可決の前に、その提出を求める請願が出されていた。請願の紹介者は保守系町議。議事録によると、共産町議が「国にとって都合のいい価値観を家庭支援の名の下に押しつける危険性がある」と反対討論をした後、賛成多数で採択された。意見書も続けて審議され、同様に共産町議の反対討論後、賛成多数で提出が決まっていた。

 賛成した議員の1人は「良い考えと思って迷わず賛成した」と振り返る。

 請願の提出者は「一般社団法人熊本ピュアフォーラム」(PF)だった。所在地は芦北町内。議会事務局の担当者は「請願が出されるまでこの団体のことは全然知らなかったが、代表は元県教育長になっており、信用した」と話した。

 他の自治体の議会事務局にも尋ねた。宇土市玉名市上天草市南阿蘇村の4議会で可決された意見書も、もとの請願の提出者はPFで、賛成多数で採択されていた。いずれの意見書も、「家庭は社会と国の基本単位」など文言は似通っていた。

 残りの2市はどうか。

 阿蘇市議会への請願は「阿蘇市青少年健全育成市民会議」が提出者だった。同会議の役員だった元市議に経緯を聞くと、「PFの事務局長の男性に頼まれ、私が代わりに会議の名で請願を出した」と明かした。元市議は事務局長から「以前に請願を出そうとして断られたことがあるので、市民会議で出してほしい」と言われ、「県内全部の議会に請願を出したい。協力して欲しい」と言われたという。

 もう一つは荒尾市議会。意見書を提案した市議は取材に「PFのメンバーに頼まれて出した。悪い内容ではないと思った」と話した。

 全7議会の意見書の起点にPFの動きがあった。どんな団体なのか。

 芦北町議会に提出された請願文書には、提出者のPFを説明する書類が添えられていた。理事には熊本県議らが名を連ね、地方議員の会員が22人いるという。登記簿によると、事務局長は理事の1人だった。

 事務局長の名は、21年3月付で県選管に提出された政治団体の書類の中にもあった。教団の友好団体「国際勝共連合」の熊本県本部で、代表を務めていた。

 取材を申し込んだ。

「家庭教育支援法の認識は?」問うてきた事務局長

 登記簿によると、「熊本ピュアフォーラム(PF)」は2016年に設立された。目的に「日本国の青少年健全育成の促進と精神伝統の創生」「国への請願や陳情及び地方自治体及び地方議会に対する陳情や条例の改正を要望」を掲げる。

 事務局長の男性を今年9月に訪ねると、メールでのやりとりを求められた。

 ――設立の目的は

 「社会が協力すればもっと良くすることができるのではないかという思いから。13年から始めていたが、元県教育長(メールでは実名)との出会いがあり、14年1月に先生(元教育長)を代表として設立した」

 ――家庭教育支援に関する活動の狙いは

 「人が健全に育成される為に地域を大切に文化や伝統を守りながら国の礎としての地域づくりに貢献することが目的」

 ――世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係は

 「PFは元県教育長と私が創立し、世界平和統一家庭連合とは別団体」「PF発足を機に、活動していたことが国際勝共連合の方の目に留まり、スカウトされたのがきっかけ。しかし勝共連合の活動は何もしてこなかった。代表とは名ばかりで留守番のような立場」

 国際勝共連合は教団の友好団体だ。

 男性は記者に、家庭教育支援法の認識を問うてきた。返答した上で再度の質問を送り、面会取材も求めたが、返事は来なかった。

 PF代表の元県教育長は取材に、議会への請願は事務局長に任せていると説明。「PFは旧統一教会とは全く関係ない」と言う。

〈国際勝共連合の話〉「家庭教育支援法」はもともと自民党の政策であり、弊団体が独自に推進しているものではありません。政策に入れるように組織的に要請しているのではなく、賛同している立場です。

元市議「いま思えば教団に利用されていた」

 接点のあった地方議員らは、PFと教団との関係をどう受け止めたのか。

 阿蘇市で20年、同法制定を…

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