NMB川上千尋の「生涯アイドル」宣言 なぜ私たちは茨の道を行くか

有料記事NMB48のレッツ・スタディー!

構成・阪本輝昭
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NMB48のレッツ・スタディー!番外編 私たちのアイドル道(みち)③

 大阪・難波を拠点として活動するアイドルグループ「NMB48」が27枚目のシングル曲「好きだ虫(むし)」を9月21日にリリースする。新曲の最大の特徴は、この曲を歌う「選抜メンバー」14人が3月にあったファン投票によって選び出されていることだ。ファン投票で1位となり、同曲のセンターポジションに就いたのはNMB48の4期生で、加入10年目の川上千尋さん(23)。「決して順風満帆なアイドル生活ではなかった」と自ら語る川上さんの劇的なセンター獲得はファンに驚きと感動を与えた。初めてファンの手で選び出されたシングル曲の歌い手たちは、この曲にどんな思いを込めるのか。川上さんのほか、投票によって選抜メンバー入りした上西(じょうにし)怜さん(21)、塩月希依音(けいと)さん(16)に聞いた。

「光と影の日々」の先にあるものは NMB48の3人が描く未来地図

NMB48の川上千尋さん、上西怜さん、塩月希依音さんがそれぞれの「アイドル道」を語る「NMB48のレッツ・スタディー!」番外編(全4回予定)。こちらは2回目の記事へのリンクです。

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アイドルは、センターは…「割に合う」のか 川上千尋さんの答えは

 ――ここまでのお話を聞いていても、アイドルという仕事は傷つくことも多い、センターをめざす過程で苦しい思いをすることも少なくないというふうに感じられます。「果たして、割に合うのかどうか」を考えることはありませんか。

 川上:私はセンターに「急になっちゃった」ケースなんですけどね(笑)。わたしは人生においてコストパフォーマンスとかを考えるタイプじゃありません。私は、アイドルとして様々な分野で頑張るうちに次第に知名度が上がり、自然な流れでセンターに就くというかたちを想像していました。なので、私にとってはまだセンターをめざす道のりにあったというか、予想外に早いセンターの座だったんです。でも、つかんだからには、今後もセンターを続けていきたい。ここまできたら、ね。

 ――3月に取材した際、「これからもずっとアイドルでいい」と言っていました。

 川上:たとえ将来、NMB48を卒業する日がきても、アイドルはアイドルであり続けたいと思いますよね。ファンのみなさんの中でもそういう位置付けであってほしい。かわいいと思い続けてもらいたい。これは変わりません。

アイドル10年生は嵐に夢を見る 加藤夕夏、川上千尋の栄光と未来

NMB48の川上千尋さん、加藤夕夏さんが「アイドル10年生」としての歩みとこれからを語った今年3月のインタビューです。

 ――そうなんですね。

 川上:応援してもらえる対象としての「アイドル」は、すごく入り口が広いんですよ。

 アイドルって、グループのコンセプトにもよるけど、イベントなどに行けば、直接会話ができる。距離が近い。テレビで見るだけで終わらない。直接話ができるんなら会いに行ってみようかな――と思ってくれる人がいるかも知れない。だから、私もそういう存在であり続けたいなと思っています。

 ――プロ野球中継のゲストに招かれるなど、アイドルのイメージの枠内にとどまらない活動をしていますよね。

 川上:「アイドル」として呼んでもらえるお仕事は多いんですよ。「○○に詳しいアイドル」「○○が好きなアイドル」という珍しさでね。私ならプロ野球好きという特性があるので、それに関連したお仕事を多くいただいています。でも、そのチャンスを次につなげていけるかどうかは実力。単なる珍しさを超えて、「なるほど本物だ」と思わせるものがなければ。

誰かの「推し」である間はアイドルだと思っています(川上さん)

 ――「アイドル」としての立ち位置を守りつつ、仕事の幅も広げていく戦略ですね。

 川上:「じゃあ、アイドルの定義って何よ」という話になると思うんですけど。誰か一人でも、私を「推し」だと思ってくれる人がいる限りは、私はアイドルだと思っています。その間は、アイドルをやめられないなあって。

 ――じゃあ、一生アイドルをやめられない可能性がありますね。

 川上:そうですね。「生涯アイドル」で。生涯アイドル宣言、しときます。

 ――ファンの方たちは、川上さんのそういう「ずっとアイドル」路線がうれしいみたいですね。

 川上:そうですね。私も(3月の記事への反応をみて)びっくりしました。

センターをめざすのは…「アイドルの本能のようなもの」(上西さん)

 ――上西さんはセンターをめざすことが「割に合うかどうか」で考えたことはありますか。

 上西:コスパで考えたことはないです。みんなないと思いますね。アイドルになった以上は、一度はめざす場所だと思いますし。それはアイドルの本能みたいなものですよね。

 センターをめざす過程が大事なんだと思うんです。そこで手に入れられるものがあって、活動の幅が広がるところもあるし。

 ここ数年、NMB48を引っ張ってきた先輩や中心メンバーが卒業して、「NMB48、大丈夫か?」という声も耳にすることがあるんですけど。でも、私たちにとっては、その穴を埋め、取って代わる存在になるチャンス。そういう意味では、センターへの扉は常に開いていると思います。

 ――センターをめざす過程で得られるものとは。

 上西:センターを担う人は弱音を吐いちゃいけない、弱いところを見せない。そのために必要なのは強いハート。センターをめざす過程で、自信をつける大切さを学んだり、先輩たちのNMB48にかける思いを知ったり。一つひとつの活動に臨む覚悟というものもついてくると思います。

 ――自信ですか。

 上西:私はなかなか自分に自信がもてない方だったので、なおさら思います。でも、別に終始ずっと自信満々の状態でいる必要はなくて。みんなの前に出るとき、お客さんの前に立つときに堂々とできればいい。そう考えると、気持ちがだいぶ楽になりました。

ファンとメンバーの気持ちを代弁して…あの日の私の思い(上西さん)

 ――「ナンバトル2」の開票イベントで3位となった際、上西さんはスピーチで「こんなにもメンバーが泣いたり、いろんな気持ちになったりして。ファンの皆さんが一生懸命応援してくださったので、大人のみなさん! メンバーもファンのみなさんも楽しめるご褒美をください!」と述べました。あれはどんな気持ちから?

 上西:あの場で思ったんです。言おうって。あそこでは、いろんな感情がうずまいていました。躍進したメンバーもいれば、前作の選抜メンバーがアンダーガールズ(カップリング曲を歌う10人。15~24位)に入るケースもあり、もちろんランクインできなかった子の悔しい気持ちもひしひし伝わってきて。

 でも、そこにいる全員、NMB48が大好きで、そこにかける熱い思いがあって……というのを知っていたから、「このままの空気で終わっちゃいけない」と思って言いました。

 ランクインしたかどうかに関係なく、メンバー一人ひとりがものすごい努力を重ねたし、それに応じてファンの方々も力を尽くしてくれた。みんなが等しく、楽しめるご褒美をもらってもいいだけの頑張りをやりとげたはずだ。そんな思いでした。

 ――センターをめざしていた上西さん自身も、順位に悔しさがあり、あの場で気持ちは乱れていたのでは。

 上西:あはは。でも、私は前作(「恋と愛のその間には」)でセンターをつとめた立場です。その経験を通じて芽生えた気持ちもあるし、思いもある。何より、(前作で)NMB48の顔をつとめたものとして、みっともない姿はみせられないですよね。センターとしての経験がなかったら、どう振る舞えたかはわかりません。私は基本、自信がない人間なので……。

 ――上西さんはよく「NMB48は全員がセンター候補。センターをめざしてはいけない人なんかいない」と言っています。

 上西:それは本当にそう思います。世の中とか会社とかでもそうだと思いますが、やっぱり同期生の中でのポジションをメンバーたちは強く意識している。同期の誰かに先を越されて、ショックを受ける。ほかでもない私自身がそうだったので、その心理はよくわかります。

 そんなことが続くうちに、「私、アイドルに向いてないのかな」とこぼすメンバーもいます。でも、そういうことじゃなくて……。

 みんな最初はセンターをめざして入ってきているはずなんです。でも、その手前で足踏みしているように感じると、「センターをめざしている」とは公言しづらくなる。それはもったいないことで、みすみす飛躍のチャンスを逃しちゃうことにもなるのかなって。

 だから、センターはみんながめざしていい場所だし、「めざすべき」場所だと言い続けることは大事かなと。自分自身へのエールも込めて、ですけどね。(④に続く)

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「NMB48のレッツ・スタディー!」番外編「私たちのアイドル道(みち)」は全4回の予定です。記事末尾では読者プレゼントの案内もあります。ふるってご応募下さい。

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