「核保安サミットの日本開催期待」 元米高官スコット・ローカー氏
ニューヨークで開催中の核不拡散条約(NPT)再検討会議では核軍縮や核不拡散に加え、原子力の平和利用が話し合われている。ウクライナの原発が攻撃されている問題は、核セキュリティーの危機として懸念される。オバマ米政権の元ホワイトハウス高官で、国際NGO「核脅威イニシアチブ」(NTI)副代表のスコット・ローカー氏が6月、訪問先の広島市で朝日新聞の取材に応じた。
――広島訪問の理由は。
「核セキュリティーの難題について世界の専門家らが議論する会議を開催した。10年続けているが、いま核兵器の爆発を防ぐため、真っ先に会場として考えたのが広島だった」
――ロシア軍の侵攻当初の原発攻撃をどう見ますか。
「ロシア軍は(欧州最大級の)ザポリージャ原発に加え、原子炉は稼働していないが貯蔵施設があるチェルノブイリ原発も攻撃した。国家が他国を侵攻中に原発を標的にしたのは初めてだ。『非国家』によるテロを想定していたが、国家は想定外だった」
「ロシアが原発を意図的に破壊するより、戦闘中にミサイルや砲弾が原子炉や使用済み燃料貯蔵庫などに当たり、放射能が広く飛散する事態が大きな懸念だ」
――核兵器の使用リスクはどれほどありますか。
「侵攻が始まった2月24日の前より大きい。核兵器保有国が非保有国に使えば、NPTの基本原則に反し、ゲームチェンジャーとなる」
――オバマ大統領(当時)の呼びかけで2010年に始まった、主要国の首脳らが核テロ対策を話し合う核セキュリティーサミットは16年を最後に開かれていない。日本での開催を専門家が提案しています。
「サミットは、核セキュリティーの前進に対して、政治的な関心を高めた。新たな脅威に対処するため、日本でサミットを開催するなら歓迎だ。日本は核セキュリティーに強く関与している。来年5月の主要7カ国(G7)の広島サミットで表明すれば素晴らしいし、広島は最高の開催地の一つだと思う」…