ロシア大使はなぜ突然広島へ 炎天下の熱弁27分、ほの見えた狙い
8月6日の「広島原爆の日」を目前に控えた4日、ロシアのミハイル・ガルージン駐日大使が広島市中区の平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花した。広島市はロシアのウクライナへの侵攻を理由に、6日の平和記念式典へのロシア代表の招待を見送っていた。「あてつけ」のようにも見えた今回の訪問の目的は何だったのだろうか。
ガルージン氏は4日午前10時10分すぎ、同行したロシア大使館員らと慰霊碑に向かって整列し、大きな花かごを捧げた後、深々と一礼した。
献花後、報道陣の取材に応じたガルージン氏に真っ先に向けられた質問は、訪問の目的についてだった。ガルージン氏は流暢(りゅうちょう)な日本語で、メモも見ずにこう切り出した。
「1945年8月6日、アメリカが行った原爆投下という戦争犯罪の犠牲者の方々が、言葉で言い尽くせないほどの痛み、悩み、苦しみを感じられたことを、私がこの広島平和公園で記念碑に献花します際に、改めて痛感いたしました」
「そして、本日こちらにお邪魔させて頂きましたのは、まず犠牲者の方々のご冥福をお祈りし、遺族の方々に哀悼の意を表し、被爆者の方々のご健康をお祈りするためです」
「そしてロシアが、核兵器の削減、最終的な廃絶のために行っている積極的な努力について説明するためでもあります」
炎天下での取材対応は27分間に及んだ。
ガルージン氏は午後、広島市内のホテルでロシア大使館と民族派団体「一水会」が共催した円卓会議「軍備管理と核軍縮の現状と見通し」に参加した。
会議終了後には約1時間、記者会見に応じた。報道各社からのすべての質問に答え、ロシア側の主張を繰り返した。
ガルージン氏の話を総合すると、広島市の招待見送りによって、自身もかつて参加してきた原爆犠牲者追悼の機会を奪われたと考え、自らのアイデアでスケジュール調整をして広島訪問を決めた。
それに合わせて、原爆をめぐる歴史観で認識が一致する「一水会」と円卓会議を開くことにしたという。
ガルージン氏が何度も口にしたのは、「欧米日の政府もマスコミも事実無根の騒ぎを起こしている」「事実を歪曲(わいきょく)している」という言葉だった。
今回の広島訪問が、ウクライ…