JR東、ローカル線の収支初公表 福島県内の反応は
JR東日本が28日に初めて公表したローカル線の収支で、福島県内を走る路線の厳しい経営事情が明らかになった。人口減少に歯止めがかからない地域を走る鉄路をどう維持していくのか。今後、JR東との協議が見込まれるなか、県や地元自治体は知恵をしぼることになりそうだ。
今回公表の対象となったのは、1キロあたりの1日の平均利用者数(輸送密度)が2千人未満の35路線66区間。うち県内の路線は水郡線、只見線、磐越西線、磐越東線の4路線9区間。11年の豪雨災害で被災し不通が続く只見線会津川口―只見間は公表されなかった。
2020年度で見ると、最も赤字額が大きかったのは磐越西線の野沢(西会津町)―津川(新潟県阿賀町)間の10億4千万円。次いで水郡線磐城塙(塙町)―安積永盛(郡山市)間の10億200万円だった。
費用に対する収入の割合を示す「収支率」は、磐越西線野沢―津川間が0・6%と最も低く、水郡線常陸大子(茨城県大子町)―磐城塙間の1・2%、只見線只見(只見町)―小出(新潟県魚沼市)間の1・3%と続いた。
10月1日に約11年ぶりに全線再開する只見線は、現在運行している区間でも厳しい経営状況にあることが浮き彫りになった。
不通区間の会津川口―只見間については、JR東は当初、廃線にしてバス転換する方針を地元側に提案していた。同区間は09年度、年2億8千万円の運行経費に対し、運賃収入はわずか500万円の「超赤字路線」だったためだ。
県や会津17市町村はJR側と協議を重ね、17年6月、同区間の鉄路や関連施設を県が保有する「上下分離」方式で復旧することに合意した。
だが、過疎化が進む会津の自治体にとって、年3億円と見込まれる維持費の負担は軽くはない。ふたたび自然災害で鉄道が被災すれば、復旧費用は地元が負担しなければならない。
県や地元市町村は、只見線を「日本一の地方創生路線」として、様々な活用策を打ち出す。県只見線再開準備室の工藤宇裕室長は「人口減少が続くなかでの鉄路維持は厳しいが、多くの人に利用してもらえるよう、知恵を絞っていかなければならない」と話す。
県から「只見線地域コーディネーター」を委嘱された只見町の酒井治子さん(41)も「全線再開はうれしい半面、それを選択した私たちの覚悟と責任を問われることにもなる」と話す。