女性に「選ばせてきた」社会 活躍推進の前に差別清算を 竹内幹さん
経済季評 一橋大准教授・竹内幹さん
「参政権なんかもたせるから、歯止めがなくなってしまっていけませんなあ」とは、1984年に経団連の稲山嘉寛会長が発した言葉だそうだ(赤松良子著「均等法をつくる」)。これが、男女雇用機会均等法の草案を示されたときの財界トップの感想なのである。当時の女性差別の根深さを語るエピソードだ。
たけうち・かん 1974年生まれ。一橋大学准教授。米ミシガン大博士。研究テーマは実験経済学、行動経済学。
85年に成立した均等法によって、女性の定年だけを若く設定したり、結婚した女性を退職させたりといった差別は違法となった。それでも、差別的な雇用慣行は続いた。採用や昇進での女性差別は、97年の均等法改正でようやく禁止される。今でも上場企業の役員に約8%しか女性がいないのも当然だろう。
先日の参院選で当選した女性候補は過去最多だったというが、政治分野の男女格差も依然として惨憺(さんたん)たるものだ。衆参両院の国会議員に占める女性は約15%にすぎず、列国議会同盟のデータで計算すると185カ国中、145位だ。
男女平等を阻む「歯止め」は、社会の至る所に今も残る。
生まれつきの男女の違いではなく、社会的に作られる性差=ジェンダーは、経済学では意思決定の問題としても盛んに研究されている。経済的意思決定に様々な性差が観察され、それが女性の社会進出を阻む要素にもなっているからだ。
たとえば実験経済学の研究で…
- 【視点】
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