風力発電のために300年の森を破壊? 「失われる価値大きすぎる」
国内最大級・総出力約60万キロワットの大規模風力発電事業計画が進む八甲田山系。5月13~15日、生態系への影響を懸念する日本自然保護協会と地元グループの現地調査に同行した。
厳冬の吹雪に耐えた森は雪がとけ、木々が一斉に芽吹く季節。八甲田連峰は明るい新緑に包まれていた。
目指すは主峰・大岳(標高1585メートル)の北北東に位置する七十森山(885・6メートル)。雪が消えれば、生い茂る草木が行く手を阻む。登山道はなく、人が歩いた跡も見えない、ひっそりした奥山だ。
雪がまばらに残る中、地図で方向を確かめながら、背の高さを超えるやぶをかき分けて進む。2時間余り登ってやっと尾根に出た。風車の建設予定地だ。
残雪の大地から天を仰ぐようにブナの巨木がそびえ、枝を広げる。「見事だね。測ってみよう」。群生するブナにメジャーをあてていく。幹回りは3・2~3・6メートル前後。「その太さなら樹齢300年くらいか」と協会の若松伸彦博士(植生地理学・環境学)が教えてくれた。「伐採したら、森が元に戻るまで400~500年かかるだろう。ここは、数十年の事業のために手をつけてはいけない場所だ」と話す。
山ガイドの川崎恭子さんは「この景色は先代が守り続けた『宝』。後世に残さなくては」と話した。青森市出身で「八甲田は幼いころからの原風景、壊したくない」。3歳からスキーで滑り、選手時代は世界各地の山々にも遠征したが、苦しい時も寂しい時も、思い浮かぶのは八甲田だった。
心のよりどころである風景の…
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