ジュゴンはどこへ? いま、海に響く埋め立て工事の音 「心が痛い」
現場へ! 命輝け! 大浦湾③
波の音を聞きながら、クワズイモの大きな葉をくぐって進むと、アダンの林の向こうに海が見えた。鳥のさえずりや風の音も、心地よく耳に届く。
大浦湾奥から東へ直線距離で約9キロ。沖縄県名護市東海岸の嘉陽(かよう)と天仁屋(てにや)の間にある浜辺に、「じんぶん学校」はある。林の中に、隠れ家のような小屋やかまどが並んでいた。
沖縄のエコツアーの草分け「エコネット・美(ちゅら)」の活動拠点だ。島袋安奈さん(44)は夫の信悟さん(44)とともに、ここでエコツアー事業の運営に携わっている。
沖縄の言葉「じんぶん」とは、生きるための知恵という意味。その知恵を生かし、海や山で昔ながらの生活を体験するツアー。コロナ禍で島外の修学旅行が途絶え、いまはもっぱら、島内の子どもたち相手だ。
安奈さんは2003年、名護市辺野古の米軍基地建設の中止を求め、日米の環境NGOが米国防総省を訴えた「ジュゴン訴訟」の原告の一人だった。
「ジュゴンが工事を止める希望になるかもしれない」と考え、参加を決意したという。
裁判は訴え却下や差し戻しなど紆余(うよ)曲折を重ね、提訴から17年後の20年に敗訴が確定。希望はかなわなかった。「でも、大きな収穫はありました」
日米の関係者の橋渡し役とし…
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