無届け保育園に流れる訳は? 1歳児死亡、外国人を阻む「制度の壁」
愛知県の無届けの保育施設で昨年、外国籍の男児が亡くなる事故があった。園長も外国籍で国の基準を満たさず運営していたが、園児は開園から9年間、途絶えたことがなかったという。外国籍の親子はなぜ、安全とは言いがたい施設に頼らざるを得ないのか。
事故が起きたのは昨年6月。園長が台所で昼食の準備をしていると、隣の保育室にいた1歳5カ月の男児が突然「ウッ、ウッ」とせき込んだ。せきはなかなか止まらず、しばらくして男児は前のめりに倒れた。
園長が慌てて抱き上げ、口の中を見ると、のどにパンが詰まっていた。男児は病院に運ばれたが、約2時間後に死亡が確認された。
当時、園長は自宅の一部を使い、1人で1~3歳の7人の子どもをみていた。6人以上預かる認可外保育施設は、複数の職員を配置するよう求める国の安全基準を満たしていなかった。
園長は、認可外保育施設の事業者に義務づけられた県への届け出もしていなかった。2012年から自宅で子どもを預かっていたが、県は事故翌日に警察から照会を受けるまでの9年間、その存在を把握していなかった。
外国籍の子どもらを支援するNPO法人トルシーダ(愛知県豊田市)の伊東浄江代表理事は、「自宅やアパートの一室で子どもを預かるという例は今も耳にする」と明かす。「子どもが1人しかいないはずのアパートに何人もいることがある」「外国人コミュニティーの中での預かり合いがある」――。他地域の支援団体からも、同様の証言は相次ぐ。
「明日から働いて」と言われても…
外国籍の親子が行政の目が届かない施設を頼らざるを得ない背景には、認可保育園が外国人労働者の実態にそぐわない現状があるという。
「『明日から働いて』と言わ…
- 【視点】
2019年に文部科学省が義務教育年齢の外国籍の子どもの就学実態調査を行った結果、自治体がその就学先を把握できていないなど、不就学の可能性がある子どもが約2万人いることが明らかとなり、話題となりました。その後、文科省では対策を進め、義務教育の
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