第2回最前線に響く中国機の爆音 「島を捨てるか戦うか」台湾海峡のリアル

有料記事中国新世 帝国の残像

東引島=石田耕一郎
【動画】台湾最北端・東引島にある民宿の監視カメラがとらえた中国機の映像=東引島 林徳建郷長提供
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 台湾最北端、馬祖列島・東引島の役場に勤める劉香吟(28)が耳にしたことがないような爆音を聞いたのは、旧正月明けの2月5日、初詣で島の山腹にある廟(びょう)を訪ねた昼下がりだった。肌寒さを感じる曇り空のもと、驚いて上げた視線のすぐ先を、見慣れぬプロペラ機が低速で飛んでいった。

【連載】中国新世 帝国の残像

近年の中国は、周辺地域へ権益や影響力を広げる動きが目立ちます。かつて築いた帝国の記憶をなぞるかのような動きは、ウクライナへ侵攻したロシアの行動原理とも重なる部分があります。国際秩序と中国の論理とがぶつかり合う緊迫の現場から報告します。

 それが、中国の多目的輸送機「運12」だったと知ったのは、数日後の報道を見てからだ。運12がこの島に飛来したのは初めてのことだ。

 劉は「目の前の山の木々と同じくらいの高さに見えた。中国機とは思わなかったし、あまりに低空だったので島の駐留軍の事故を疑った」と、当時の衝撃を語る。同機を捉えた民宿の防犯カメラも、その証言通り、山肌をなめるほどの低さで飛んでいく機影を捉えていた。

 東引島は台湾が実効支配する…

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