いずこの国も政策転換は難しい 中国「ゼロコロナ」政策から見る世界

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瀋陽=金順姫
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 中国の「ゼロコロナ」政策が正念場を迎えています。

 これまで厳しい対策で新型コロナウイルスの抑え込みを図ってきましたが、感染力の強いオミクロン株の出現によって感染拡大に歯止めがかかりません。都市封鎖ロックダウン)や厳しい行動制限による市民生活の犠牲が目立ち、不満も高まっています。

 それでも、「堅持こそ勝利だ」という号令のもと、中国政府はゼロコロナ政策を維持する姿勢をくずしていません。感染者がいることを前提にした「ウィズコロナ」社会を模索する他国との違いが際立っています。

 中国の現状から何が見えてくるのか。他国がくみ取れる教訓はあるのか。

 中国の感染症の歴史に詳しい青山学院大の飯島渉教授(医療社会史)に聞きました。

 飯島渉(いいじま・わたる) 1960年生まれ。青山学院大文学部教授。専門は医療社会史。著書に『感染症の中国史 公衆衛生と東アジア』(中公新書)など。

 ――中国のゼロコロナ政策をどのようにみていますか。

 コロナ対策の原理はシンプルで、各国がとっている対策はゼロコロナとウィズコロナの間のどこかに位置します。中国と日本の対策はほぼ対極にあるといえます。

 現段階で、その他の東アジアの韓国、台湾、香港の感染状況もかなり異なっています。その理由がきちんとわかるようになるには、もう少し時間がかかると思います。

 2020年のCOVID―19(新型コロナ感染症の正式名)の初期段階において、ロックダウンを含む強い対策をとる意義は確かにあったと思います。新興感染症としてウイルスの特性も不明で、致死率が高い可能性もあったからです。SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)はそうでした。

 しかし、時間の経過の中で、変異株が登場し、特にオミクロン株という感染力が高くかつ重症化の可能性が低い変異ウイルスが蔓延(まんえん)する現在の状況は、ワクチンの接種を進め、医療的な対応を充実させながら、ウィズコロナで集団免疫を獲得するという戦略を選択せざるを得ない段階だと思います。私の見るところ、日本や韓国も含め、多くの国がそちらにかじを切りました。その意味では、中国の対策はかなり独特のものといえます。

政策転換の適切なタイミングは

 ――中国がゼロコロナ政策を続けてきたのは妥当でしょうか。これまでに政策転換の適切なタイミングはあったのでしょうか。

 今回のコロナ対策も含め、多…

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