三セク鉄道は必要か 苦境の三陸鉄道前社長が提唱するマイレール意識

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聞き手・西晃奈
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 東日本大震災からの復興の象徴で、ファンが全国から訪れ、住民の足になって地域を支えている三陸鉄道岩手県宮古市)。近年はコロナ禍による乗客減などで厳しい経営が続いているが、今後はどうあるべきなのか。中村一郎・前社長(66)に退任前の3月末、話を聞いた。

 ――震災後の11年間を振り返って

 前半5年は県職員として、後半6年は三鉄を通して、三陸の復旧・復興に関わってきた。防潮堤や災害公営住宅などハードの整備はほぼ完了した一方、人口減やサケやサンマ、イカなどの主力魚種の不漁と、課題は山積み。復興とは、よりよい地域をめざした「エンドレスの取り組み」だとつくづく感じる。

 ――実質的な赤字決算が続くが、究極的に三鉄は必要なのか

 社長就任後、しょっちゅう考えていた。「赤字を出すなら、バスの方がお金がかからない」と言われたこともある。人を運ぶという移動手段としての役割だけなら、鉄道はコストがかかりすぎ、正論だと思う。

 だが、リアス線が全線で開通した2019年の夏、ホテルやタクシーの業界、飲食店から「おかげでお客様が増えた」という声を多くいただいた。

 三鉄に乗りたくて三陸を訪れる人も相当数おり、大きな観光資源になっている。会社の収入には直接反映されないが、三陸全体でみれば地域経済に貢献しているという自負がある。

 ――観光面としての役割が大きいということか

 観光など交流人口の拡大による地域の振興に貢献することも重要。一方で、「住民の足」として地元のみなさんに、いかに利用してもらうかも大切だ。

 高校生や高齢者にとっては欠かせない交通手段である一方、地元でも年に1回も乗車しない方も大勢おり、「マイレール」という気持ちをもってもらう取り組みが必要になる。

 以前、久慈市の秋祭りを見にいく企画列車を運行し、宮古市周辺の方々を連れて行った。そのとき、「こんなに素晴らしいものだと知らなかった。もっと沿岸各地に足を運びたい」との声をもらった。沿岸の文化を知ることで、地域をつなげる役割もある。

赤字の三セク路線、税で支える案も

 ――昨年12月、三鉄とほぼ並走する三陸沿岸道路が開通した

 「道路は鉄道のライバル」と…

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この記事を書いた人
西晃奈
ネットワーク報道本部|大阪府庁
専門・関心分野
子育て、教育、働き方、防災、平和
東日本大震災

東日本大震災

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