ウクライナ原発占拠、福井に与えた衝撃 本当に「ありえへん」未来か

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比嘉太一
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 ロシアによるウクライナの原発の占拠は、有事に原発が攻撃の対象にされうることを全世界に突きつけた。東京電力福島第一原発事故から11年。災害や事故による放射能漏れのリスクを感じながら原発と共生してきた人たちは、新たな事態に何を思っているのか。日本で最も原発が集中する福井県の沿岸部を歩いた。

 ザポリージャ原発占拠2日後の3月6日、福井県敦賀市に向かった。同市を含む県南部には廃炉中も含め原発15基が立ち並び、「原発銀座」と呼ばれる。

 「原発銀座」を歩いたのは、米軍基地が集中する沖縄の出身の記者でした。米軍基地と原発。全く違う施設ですが、沖縄で新聞社に入り、基地問題を取材してきた記者は、両者に通じる部分を感じたと言います。記事の後半では記者の考えを紹介します。

「夢の原子炉」の3㌔先に老朽原発

 「夢の原子炉」といわれたもんじゅがある敦賀半島には、関西電力美浜原発もある。美浜1号機は1970年の大阪万博に送電し、「原子の灯」と言われた。もんじゅとの距離は約3キロ。美浜3号機は昨年6月、運転40年を超える老朽原発として全国で初めて再稼働した。

 敦賀半島の付け根にある料理店「一休」。日本海の新鮮な刺し身とへしこが売り物の店で、おかみの広瀬智恵子さん(63)は言った。「原発が攻撃の対象になるなんて思ってもいなかった」

 美浜で生まれ育った。原発は「空気のような、あって当たり前の存在」。店では関電や原発業者が宴会を開いた。2004年に美浜3号機で11人が死傷する事故が起きた時も、その後の運転再開を受け入れた。11年の福島原発事故で、「何かあれば犠牲になるのは地元なんや」と思ったが、関電の対応を信じた。

「攻撃対象になるなんて」

 その原発が攻撃され、リスクを再認識させられた。「自分で地下掘って安全な場所を確保せないかんのかとまで感じる」

 長男が店を切り盛りするようになった。孫は3歳と5歳。「いま思うのは未来のことだけ。だけどみんな廃炉になると、町の今後はどうなるの、とも思う」

 一休の近くで喫茶店を営む政岡弘子さん(80)は、「県原子力平和利用協議会」の女性部会長だ。原発を推進するべきだと信じてきた。息子2人は原発関連企業で働く。原発と共に発展していく街を見てきた。

 新規制基準に基づき、関電は美浜原発にテロ対策の設備を建設中だ。ウクライナで起きたことについて尋ねると、「関電はしっかりしておる。外国からの攻撃は現実的にはありえへん」と話した。

「大規模損壊に備え、対応整備」 関西電力広報室は

 関西電力広報室の話 軍事攻撃のリスクに対しては、我が国の外交上・防衛上の観点から対処されることであると認識している。なお、原発では、原子炉施設の安全性を確保するために必要な重要設備は、堅固な原子炉建屋や原子炉格納容器内に設置されている。新規制基準では、意図的な航空機衝突等による大規模損壊時の対応についても要求されており、発電所においては多様な重大事故等対処設備や手順を整備している。これらの備えにより原子炉や原子炉格納容器の冷却手段を確保することで、炉心損傷や大規模な放射性物質の放出につながる事態を最大限回避することができる。

 関電大飯原発のあるおおい町へ向かう。温泉施設、体育館、ホテル、原発PR館……。幹線道路沿いには建物が立ち並ぶ。

 県内には74年から19年度…

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