脳科学者から見た勝海舟 レジリエンスを育む「心の安全基地」とは

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聞き手・鈴木裕
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 勝海舟の脳の使い方を、今の時代にこそ伝えたい――。脳科学者で「科学的に幸せになれる脳磨き」などの著書がある岩崎一郎さんが、こんな発信をしている。キーワードは「柔軟さ」「心の安全基地」「利他」。脳科学から見た勝海舟の魅力を岩崎さんに聞いた。

 ――なぜ勝海舟に注目したのですか?

 勝海舟が生きたのは、幕末から明治維新へという日本の体制が大きく変わった激動の時代です。倒幕と佐幕が実力行使でせめぎ合う中で、勝は、幕臣であるにもかかわらず、自分が属している幕府が正しいとか、討幕派はけしからんとか、善悪を決めつけ、分断をあおるような視点は持ちませんでした。自分の立場を超えて、日本の未来をよりよくしたい、欧米列強と並ぶような国にしたいという大きな志が原動力になっていました。これは、西郷隆盛坂本龍馬も基本的に同じ視点だと思います。

 勝は、江戸幕府の下っ端役人から経歴をスタートしますが、彼の蘭学(らんがく)の学識や精神的な落ち着きが高く評価されて、日本の軍艦として初めて太平洋を横断した咸臨丸の実質的な船長に選ばれたり、海軍操練所を任されたりと、幕府の中でもだんだんと重用されます。その礎となったのが、脳科学や心理学ではレジリエンス(精神的回復力)と言いますが、打たれ強さ、柔軟性です。

 ――勝海舟のレジリエンスが優れていたのですね。

 レジリエンスは、ハワイ・カウアイ島での調査から明らかになりました。1960年代、アルコール中毒やギャンブル依存の大人が社会にあふれ、貧困と混乱が問題になっていました。子どもたちにも大きな影響があり、多くの子どもは非行に走りました。それでも一定の割合では、きちんと学校で教育を受けて、立派な大人に育っていった子どももいました。その違いはどこから来るのか。米国の調査団が調べて分かったのがレジリエンスでした。

 勝も、正月の餅すら買えない…

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